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【阪急沿線おしらべ係 第73回】
“未来の乗り物”が半世紀を経て、大阪・関西万博で見つけた次世代モビリティ最前線

【2025年6月配信】

このコーナーでは読者のみなさんからお寄せいただいた、阪急沿線でふと見つけた「気になるもの」や「面白いもの」などを、阪急沿線おしらべ係が調査します。
今回こんなリクエストをいただきました。

大阪夢洲で開催中のEXPO 2025 大阪・関西万博を詳しくレポートしてください。

EXPO 2025 大阪・関西万博 (以下、大阪・関西万博)は、国内外から多くの方が訪れ、連日話題になっていますよね。
今回は阪急沿線おしらべ係ならではの目線で、“未来の乗り物”をテーマに、大阪・関西万博の次世代モビリティを取材してきました!

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1970年大阪万博の乗り物を振り返る

大阪・関西万博を訪れる前に、まずは55年前の1970年大阪万博で話題となった乗り物を振り返りましょう。

1970年大阪万博では、会場内の移動手段として「万国博モノレール」が誕生しました。


万国博モノレールは各パビリオンを結ぶ全長4.3kmの環状路線でした。写真提供/東急株式会社

万国博モノレールは、1本の走行軌道に車両がまたがって走行する、日本跨座型(こざがた)という形式のモノレール。会期中の1970年3月から9月まで期間限定で運行し、乗客は万博会場の景色を眺めながら移動を楽しめました。


当時は東京急行電鉄が運行管理していました。写真提供/東急株式会社

三菱未来館のパビリオン内部に設置された、動く歩道「トラベーター」も大きな話題を呼びました。
三菱未来館は、来館者が全長152mあるトラベーターに乗って5つの展示室を巡るという展示構成。トラベーターは分速16m(時速1km/h以下)と、展示風景をゆっくりと眺めながら移動できる速さだったといい、床が動くという斬新な移動手段が、世間に大きなインパクトを与えました。


冊子「EXPO'70 日本万国博覧会で活躍する三菱昇降機」より、三菱未来館のトラベーター(ページ中央下の1点と、右下の2点)。写真提供/三菱電機ビルソリューションズ株式会社

1967年、阪急梅田駅(現大阪梅田駅)に動く歩道が設置されましたが、その後日本に広く普及したのは、1970年大阪万博も大きなきっかけだったそうですよ。


阪急梅田駅に動く歩道を設置(1967年)

そして「電気自動車(EV)」も注目の的でした。当時の主流はガソリン車。排出ガスによる環境問題が意識され始めていた中、排出ガスを出さないEVは、未来のクリーンな乗り物として大きな話題となりました。


EVは会場内での利用を想定し、6人乗りで時速6~8km/h程度だったそう。写真提供/ダイハツ工業株式会社

これらの乗り物は、単なる移動手段としてだけではなく、未来の技術や生活を予告する象徴的な存在として、多くの人々の記憶に刻まれました。
それから55年たった今、乗り物はどのような進化を遂げているのでしょうか。新たな次世代モビリティを求めて、大阪・関西万博に向かいます!

次世代モビリティが織りなす新たな移動風景を求めて大阪・関西万博へ

大阪・関西万博へのアクセスは複数のルートがありますが、万博会場に最も近い鉄道の駅はOsaka Metro夢洲駅です。


Osaka Metro夢洲駅のホーム


こちらは夢洲へと向かうOsaka Metroの新型車両400系

未来的なデザインや最新設備など、新型車両や夢洲駅の見どころは多数ありますが、今回は阪急バス・阪急観光バスが取り組む、新大阪駅~万博シャトルバスの自動運転(一部区間)に注目です。
新大阪駅と万博会場を直通で運行するシャトルバスのうち1台が、自動運転レベル4相当(※)の機能を搭載するEVバスとなっています。

※自動運転レベル4(特定の条件下において、システムが全ての運転操作を実施)水準のシステムを用いていますが、法令上はレベル2自動運転のため乗務員が運転席に乗車し、手動介入する場合があります。


自動運転バス(自動運転は万博会場行きの淀川左岸線2期区間(豊崎~海老江))のみ実施。安全確保のため、乗務員が運転席に乗車し、手動介入する場合があります)。写真提供/阪急バス


走行はとてもスムーズ!写真提供/阪急バス


複数のセンサーなどにより取得したデータを基に自車位置を推定し、あらかじめ設定した走行軌跡や目標速度に合わせて走行するとのこと。写真提供/阪急バス

全席着座の観光タイプのEVバスによる自動運転は、なんと全国初の試み。1970年大阪万博の頃から、EVや自動運転機能がどんどん普及して、だれでも当たり前のように乗車できる日が来るなんて、技術の進歩を感じますよね。

新大阪駅~万博シャトルバスについてはこちら
https://www.hankyu-kankobus.co.jp/highway/timetable/EXPO/
※6月16日(月)現在、車両整備のため、通常の車両で運行しています。
※自動運転システムの状況や調整の都合により、手動での運行となる場合があります。

こうして大阪・関西万博の会場に到着です。


ミャクミャクがお出迎え

自動運転、走行中給電機能を備えた画期的なEVバス「e Mover」

さて、広い会場内を効率的に巡るには、乗り物を利用するのがおすすめです。その一つが、会場内を巡回するEVバス「e Mover(イームーバー)」。


Osaka Metroが運行するe Mover

e Moverは一部の車両において、自動運転や、道路に埋め込まれたコイルからワイヤレスで車両に給電しながら走行する、先進的な走行中給電も実施されています。
走行しながら給電することで、充電の頻度が減り、効率的な運行が実現できるそう。


道路に埋め込まれている長方形の白いものを「プレキャスト」といい、送電コイルが内蔵されています


壁面にデジタルサイネージが取り入れられたe Moverのバス停も特徴的

実際に乗車してみると、電気モーターならではの静かでなめらかな走行で、乗り心地の違和感は全くありません。車窓から個性豊かなパビリオンを眺めているうちに、あっという間に目的地に到着します。

安全機能を備えた快適なパーソナルモビリティ「e-SNEAKER」

もっと自由に、自分のペースで会場を巡りたい。そんな場合はパーソナルモビリティ「e-SNEAKER(イースニーカー)」がおすすめです。


1970年大阪万博でもEVを発表したダイハツ工業が、誰もが、楽しく、快適に会場を楽しめるようにとの思いから150台提供

最高速度は時速4km/hと徒歩に近いスピードで、障害物を検知すると時速1km/hまで減速し、接触を検知すると停止する、安全機能が搭載されています。

これなら多くの人が往来する会場内でも、安心感をもって利用できそうです。

空の移動の可能性が広がる次世代エアモビリティ「空飛ぶクルマ」

大阪・関西万博といえば、やはり空飛ぶクルマが気になっていました。大阪・関西万博では、SkyDriveなどの複数の企業によって、多様な空飛ぶクルマが公開されています。


SkyDriveの空飛ぶクルマ「SKYDRIVE」

従来のヘリコプターと何が違うの?と不思議に思っていましたが、空飛ぶクルマならではの特徴は主に3つ。

  • 電動で飛行するため、地球にやさしく静音性に優れている。
  • 将来的には自動運転機能が搭載され、操縦士が不在でもリモート操作で飛行可能となる予定。
  • 機体は垂直に離着陸できるため、ヘリコプターと比べて、小さなスペースでも離着陸できる。

ヘリコプターは通常、着陸地点に対して斜めに離着陸しますが、空飛ぶクルマは地面に対し垂直に離着陸できるため、より狭い場所での離着陸が可能になるそうです。


空飛ぶクルマのデモンストレーション飛行のようす


デモ飛行した機体と同じサイズのフルスケールモックアップの内装。操縦席の設備はシンプル(実際の機体とは若干異なる部分があります)

機体の充電方法も企業ごとに異なり、SkyDriveの空飛ぶクルマは、充電ケーブルをコネクター経由で機体につないで充電します。空の世界でも、EV化や自動運転化が着実に進んでいるのですね。


写真左がSkyDriveの空飛ぶクルマの充電設備

空飛ぶクルマは滑走路を必要としないため、災害時の緊急輸送や離島へのアクセスなど、様々な分野での活用が期待されています。
将来的に、乗用車と同じような感覚で、日常的に空を飛べるようになったらすごいですよね。

ハンズフリーで移動する新感覚パーソナルモビリティ「UNI-ONE」

他に印象的だったのは、ハンズフリーで移動できるパーソナルモビリティ「UNI-ONE(ユニワン)」。


本田技研工業が開発したUNI-ONE。フューチャーライフヴィレッジ内で試乗体験ができる

操縦方法はとても簡単。座席に座り、体の重心を少し傾けるだけで、前後左右に移動が可能。なだらかにカーブする動きもスムーズです。
ボタンやレバーを全く操作していないのに、ハンズフリーで走行するのが不思議な感覚。最初は緊張しましたが、すぐに慣れてきて、まるで自分の体の一部のような感覚で移動できました。


体幹が安定した3歳ほどのお子様から利用可能。すでに医療機関でのリハビリテーションなどに導入されているそう

ぜひ実際に乗って、みなさんもこの不思議な感覚を体験してみてください。

すべての乗り物がドアツードアに。革新的な移動手段「ALICE SYSTEM」

「未来の都市」パビリオンでは、次世代の移動手段として、ALICE SYSTEM(アリスシステム)が発表されました。


川崎重工業が提案するALICE SYSTEM

ALICE SYSTEMは、4人乗りの四角いキャビンに乗り込むと、キャビンごと自動で陸・海・空の様々な乗り物に乗り換えて、ドアツードアで目的地まで移動できる交通システム。


キャビンの内部。このキャビンごと列車や飛行機などに運ばれて、自分が動かなくても自動的に乗り換えできます

もしALICE SYSTEMが実用化されたら、画期的な移動手段。これまで移動に困難を感じていた方も含め、より多くの方が快適に移動できるようになるでしょう。
乗り物には、まだまだ無限の可能性があると実感しました。

大阪・関西万博の会場には踏切がある…!?

次世代モビリティを間近に見られた感動に包まれながら、大屋根リングの下を歩いていると、踏切を発見!?
しかし、会場内に列車は走っていないはず…。


大屋根リング下の踏切

こちらは、スタッフ専用車が走行する際に使用される踏切です。列車が走っていなくても、鉄道ファンの方はついつい注目してしまうかもしれませんね。

ほかの注目ポイントとして、会場内にはJR西日本グループオフィシャルストアがあるので立ち寄るのもおすすめです。JR西日本で実際に使用されていた部材や制服などを使用した壁面展示が楽しめると、鉄道ファンを中心に、人気のスポットとなっているそうです。


JR西日本グループオフィシャルストアの壁面展示


レジ周辺にも鉄道会社らしい工夫がされています

まとめ

取材を通して、持続可能な未来社会に向けて、乗り物の自動運転化、地球にやさしいEV化、様々なニーズに応える移動手段の多様化などが、着実に進んでいることを実感しました。55年前の1970年大阪万博で描かれた未来都市の姿が、今、どんどん現実のものとなっています。未来の乗り物や移動手段がどうなっていくのか、ますます楽しみになってきましたね!みなさんも会場を訪れて、次世代モビリティの革新を感じてみてください。

大阪・関西万博についてはこちら
https://www.expo2025.or.jp/

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