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【阪急沿線おしらべ係 第74回】
気になる淡路駅周辺の高架化工事!その現場に潜入!!

【2025年7月配信】

このコーナーでは読者のみなさんからお寄せいただいた、阪急沿線でふと見つけた「気になるもの」や「面白いもの」などを、阪急沿線おしらべ係が調査します。

今回読者の方からいただいた質問はこちら。

淡路駅の高架化工事について知りたいです。
今どのあたりまで完成しているのか、駅はどのようになるのでしょうか?

ずいぶん前から工事が始まり、徐々にその姿が見えてきた淡路駅周辺。

投稿いただいた読者の方と同様に、気になっている方は多いのではないでしょうか。おしらべ係もずっと気になっていました!

「もうここまで進んでいたのか!」と、数年後に完成する駅への期待が高まる現場の様子をレポートします。

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そもそも、どうして高架化工事をしている?

今回お話を伺ったのは、阪急電鉄都市交通事業本部交通プロジェクト推進部に所属する、岡崎真(おかざきまこと)さん、上野山裕己(うえのやまゆうき)さん、弓川優哉(ゆみかわゆうや)さんです。


左から岡崎さん、上野山さん、弓川さん

3人は当該プロジェクトの予算のとりまとめから工事の発注、関係する行政との協議など、事業全体を推進する業務を担当されているそうです。

この高架化工事の正式名は「阪急電鉄京都線・千里線 連続立体交差事業」。

大阪市が主体となり進めている事業で、崇禅寺駅、淡路駅、柴島駅、下新庄駅の4駅を高架化すると同時に周辺道路を整備し、地域の移動を円滑にして利便性を向上させることを目的としています。


工事区間の着手前状況

その背景には淡路駅が長年抱えている課題があります。
淡路駅は阪急電鉄で唯一、4方面の線路に接続している駅で、列車の入駅時などの信号待ちによる遅延や、それに伴う踏切の長時間閉鎖による周辺道路の渋滞などが発生している状況です。


電車が平面交差する淡路駅周辺

この事業で7.1キロメートル(京都線:3.3キロメートル、千里線:3.8キロメートル)の線路を高架化、17箇所の踏切を廃止することで、長年抱えてきたこれらの課題が解決されるそうです。

この事業計画は1994年に決定され、2008年から鉄道高架化工事がスタートしました。

詳しくはこちら
大阪市公式ホームページ 阪急電鉄京都線・千里線(淡路駅付近)連続立体交差事業

高架化工事で採用されている3つの工法

通常の列車運行を継続しながら行うこの工事。具体的にどのような方法で工事を進めているのか、上野山さんに教えていただきました。


スライドで説明していただきました

淡路駅の工事はエリアを8つの工区に分けてそれぞれ進められており、工事のために確保できている作業用スペースの有無によって次の3つの工法が採用されています。

①別線工法
既存の線路の横に高架橋を構築する方法

②仮線工法
既存の線路の横に一旦、仮線を構築し線路を切り替えた後に、既存の線路跡地に高架橋を構築する方法

③直上工法
既存の線路の上に高架橋を構築する方法

3つ目の直上工法は線路の真上で行われるため、安全確保のため終電後から始発までの夜間に工事が進められています。

また、2つ目の仮線工法と3つ目の直上工法の両方が採用されているのが下新庄駅。2025年5月現在、仮線の構築、線路の切り替えを行っているところです。

工事前のホームは、相対式(上下線を挟んで片面ホームを設置する形式)でしたが、一時的に下り線のホームを島式(1つのホームの両側に上下線が接している形式)として利用し、高架橋の構築を行います。

2024年11月に、下新庄駅の下り線が仮線に切り替えられました。普段下新庄駅を利用されている方は、いつもと違う景色に驚いたかもしれません。

※工事前(左が淡路駅方面、右が吹田駅方面)

※2024年11月より

今後、上り線が旧下り線に切り替えられる予定です。

※2025年度末頃予定


向かって左の線路が旧下り線。2025年5月現在、上り線へ切り替え工事中。現在の上り線(右の線路)はいずれ撤去されます

これも、高架化工事が完了するまでの一時的な状態……と思うと、今が貴重な時期に思えてきます。

重量800トン以上の巨大なトラス桁を、ひと晩で移動させた!

淡路駅周辺の高架化工事は阪急電鉄の歴史上、最大規模の工事となる一大プロジェクトです。

というのも、工事区間の長さに加えて周辺には新幹線やJR線が走っており、それらを阪急線と交差させるため、高架橋を高くする必要があるからです。

そんな中でも、

「もっとも困難な工事は、JRおおさか東線に交差する形でトラス桁を架設する作業でした」

と、振り返る岡崎さん。

トラス桁とは、三角形に骨組みを組み合わせた橋桁のことです。

現場周辺は住宅密集地。施工条件の制約により、高架橋の上でトラス桁を組み立てた後、設置場所に架設するという方法がとられました。


トラス桁架設前


トラス桁架設後

「2層構造となるトラス桁の重さは800トン以上、移動距離は約80メートルもあります。この移動を終電から始発までの限られた時間で完了する必要がありました」

と続ける岡崎さん。これまで数々のプロジェクトを経験してきたそうですが、これほどまで大規模な事業に携わるのは初めてだとか。
架設作業の当日は、緊張感のある現場ながらも入念な準備と現場スタッフの尽力により、予定通りに作業を終えることができたそうです。

その様子を収めた動画を弓川さんから提供していただきました!

今後、同様のトラス桁の架設作業が新幹線の線路上でも行われるそうです。

いよいよ淡路駅の工事現場に潜入!

まずは淡路駅の構造を確認しておきましょう。
完成予定の淡路駅は対象駅の4駅の中で最も高い4階建て。2階が改札、3階が上り線(京都河原町・北千里方面)、最上階が下り線(大阪梅田・天神橋筋六丁目方面)の想定です。
その高さは30メートルほどで、およそマンションの13階くらいとイメージしてください。


淡路駅完成予想パース
※本パースはイメージ図であり、詳細は今後関係者間で調整しながら決定していく予定です。

工事中の今、当然ながらエレベーターはないので、スタッフの皆さんはこの階段を毎日上っています!


現場スタッフはトイレや休憩で毎日上り下りしているそう

スイスイと上っていく岡崎さん、上野山さん、弓川さんの3人とは違い、おしらべ係スタッフは息を切らしてようやく最上階に到着……。

そして、大阪梅田方面を見てみると


壁に設置されているのは防音柵

大阪梅田のビル群が遠くに見渡せる絶景が広がっていました!!

現場では毎日約200人が作業し、夜間作業も毎日行われているそうです。

「夜はここから夜景がきれいに見えるんですよ」と弓川さん。
大阪国際空港へと向かう飛行機も見え、街が輝く景色は現場スタッフのふとした息抜きになっているそうです。

続いて、反対側の淡路駅方面はどうなっているのでしょうか?
体の向きを変えると……あれは!
もしかして、淡路駅のホームでしょうか!?


線路が敷かれる前の貴重な光景!

「この工区は工事全体の9割ほどが完了しているので、ホームも形ができあがっているんですよ」

そう話す上野山さん。案内の後について行きましょう!


ホームが近づいてきました!

ホーム手前で来た道を振り返ってみると、千里線と京都本線の線路が合流するのがイメージできるでしょうか?


左が千里線(柴島方面)、右が京都線(崇禅寺方面)

建設中のホームにも上がらせていただきました。もうすでに、3階へ下りる階段の形も見えてきています。


階段の隣はエスカレーターになるそうです

駅名標も看板もまだないホーム。どんな姿でデビューの日を迎えるのか想像するとワクワクしますね。
そのままホームの端まで進んでみましょう。


向かって左が千里線(下新庄方面)、右が京都線(上新庄方面)

こちらは工事中のため、まだ高架橋は繋がっていません。
巨大なコンクリートの高架橋がいずれ繋がるのかと思うと、壮大な工事であることを実感します。

「屋外作業となる現場は夏の暑さが一番大変です。現場ではサマータイムを導入して、朝は早めに作業を開始しています」

と岡崎さん。暑い中でも止まることなく進められる工事。現場スタッフに頭が下がります。


ちなみに、ここからは新幹線も見えます!


なかなか見ることのない角度から撮影

続いて3階を案内してもらいました。
4階の開放的な景色とはうって変わって、重厚感のある雰囲気で恰好良い!


淡路駅の上り線ホームが奥に見えています

見てください、トラス桁が延々と続くこの壮観な景色!


写真中央がトラス桁。吸い込まれていきそうです

トラス桁に近づいて見てみると、経年変化したようなレトロな風合いになっていることに気づきました。


100年くらい経ったような、いい味です

新しく架けたばかりなのに、どうして錆びているのでしょうか?

「これは鋼材を守るため、あえて表面だけ錆が発生する加工を施しているんです」

と、上野山さんに教えていただきました。

この錆は時間が経つにつれ色が徐々に変化するそうです。淡路―崇禅寺駅間の2つのトラス桁に微妙な色差があるのも、架けた時期が異なるからだそうです。


奥は濃いブラウン、手前は赤っぽい色

もしかしたら、読者の方の中に「なぜ色が違うのか?」と不思議に思っていた方がいらっしゃるかもしれませんが、これが理由です。

「今回のプロジェクトは皆様のご協力があるからこそ実現できています。特に夜間作業では、周辺の住民の皆様にご迷惑をおかけしております。日頃のご協力に心から御礼申し上げます」

と、最後に岡崎さん、上野山さん、弓川さんの3人は、口をそろえて感謝の言葉を述べられました。

取材を終えて

新しい駅の全貌が現実として見えてきた今回の取材。駅構内の施設や高架下の活用方法も気になるところですが、事業主体の大阪市と調整しながら検討を進めているそうです。完成が待ち遠しいですね!

ところで淡路駅といえば、おしらべ係では「1号線がない」駅として紹介したことがありました。現在の1号線がない淡路駅も、見納めとなるのでしょうか……!?

▼詳しくはこちら▼
【阪急沿線おしらべ係 第3回】 淡路駅の1号線はどこへ消えた?

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