【阪急沿線おしらべ係 第64回】
阪急電車の座席指定サービス「PRiVACE(プライベース)」を大調査!

【2024年9月配信】

このコーナーでは読者のみなさんからお寄せいただいた、阪急沿線でふと見つけた「気になるもの」や「面白いもの」などを、阪急沿線おしらべ係が調査します。

今回はこんな質問が寄せられました。

『「PRiVACE」について、もっと詳しく調査してください』

7月21日にデビューした阪急電鉄初の座席指定サービス「PRiVACE(プライベース)」(以下、プライベース)。
駅で見かけた方や、すでに乗車された方もいらっしゃるのではないでしょうか。これまで阪急沿線おしらべ係では、プライベースが導入された新型車両2300系のデビューまでを取材しましたが、今回はプライベース車両向けに導入したお子様用のポータブルチェアなど、より車内で快適に過ごすための様々な工夫についてマスコミ向け試乗会にて調査してきました!

新型車両2300系のデビューまでの裏側をレポート!
https://cdn.hankyu-app.com/content/article/2024/article_04.html

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プライベースに導入されたお子様用ポータブルチェアとは?

「混雑を心配せず、ゆったり電車に乗れるのが良い!」「シートや内装に特別感がある」とデビュー以来好評を得ているプライベース。上質な空間であることにプラスして、快適に過ごしていただくための様々な取り組みをご紹介します。


車内に備え付けのお子様用ポータブルチェア

取材させていただいたのは、阪急電鉄 都市交通事業本部 運輸部の加藤奈央さん。今回のプライベースについて、コンセプトの策定やサービスの企画、お子様用ポータブルチェアの導入を担当されたそうです。


お子様用ポータブルチェアは4B・4C・5B・5Cの座席に設置できる

まず、プライベースにどうしてお子様用ポータブルチェアを導入したのでしょうか。

「プライベースは『日常の“移動時間”をプライベートな空間で過ごす“自分時間”へ』をコンセプトとした座席指定サービスです。阪急電車を、もっとリラックスして、もっと安心してご利用いただきたいという想いから生まれました。お子様用ポータブルチェアは、ご家族でお出かけする際に、お子様が安心して着席することができ、それによって、隣に座る保護者の方にとっても、移動時間がよりリラックスできるものになればよいなと思い導入しました」。

乗り物の中で使用する子ども用の椅子と聞くと、車で利用されているチャイルドシートをイメージしますが想像と大きさも見た目も随分違います。

「このお子様用ポータブルチェアは、株式会社Halu(ハル)のIKOU(イコウ)ポータブルチェアという製品で、プライベースの座席に取り付けることができるように改良を加えました」と加藤さん。


子どものすり抜けや立ち上がり防止の機構を備えたIKOUポータブルチェア

今回、IKOUポータブルチェアの企画・開発をはじめ乳幼児向けのインクルーシブブランドを展開する、株式会社Haluの代表取締役・松本友理さんにもお話を聞くことが出来ました。IKOUポータブルチェアはどのようなきっかけで生まれたものなのでしょうか。

「この椅子は、体幹が弱く一人で座ることの難しいお子様が安全に座ることができるよう開発したものです。」


IKOUポータブルチェアを企画・開発する株式会社Haluの松本さん

「IKOUポータブルチェア開発の原点は、私の子どもに運動機能の障がいがあり、そのハンディによって日常の生活・遊び・学びの空間が隔てられてしまっていると感じたこと。大手自動車メーカーでの商品企画やものづくりに携わっていた経験を生かして、障がいがあってもなくても使えるプロダクトを生み出したいと考えました。障がいのあるなしに関わらず、<一人座り>に不安がある小さな子どもとその親にとって、キッズチェアは身近なものですが、外出先に気軽に持ち運びできるようなサイズ・重量のものがなかったり、屋内外でどちらでも使えるものがなかったりと課題もありました。店舗などのキッズチェア貸し出しの有無が外出先の選択に関わるほどで、それほど子どもにとってキッズチェアは大切なんです」。


体の角度を保ったまま傾けられるティルト機能

今回初めて IKOUポータブルチェアを見ましたが、とてもコンパクトで驚きました。具体的なサイズと、何歳のお子様から利用できるのでしょうか。

「バッグ状では高さ156mm。チェアに展開した時は360~550㎜になります。また、持ち歩けることを想定して重さは3.2kgとなっています。お子様が安定して長く座れる仕様になっていて、腰のすわる生後7カ月頃からご利用いただけます」と松本さん。

IKOUポータブルチェア導入までにはこんなプロセスが…

現在、劇場やスポーツ観戦の場など、様々な場所で導入が進むIKOUポータブルチェアですが、鉄道としては阪急電車が初!そのきっかけや導入を決めた理由を教えてください。

「Haluさんを知ったきっかけは、阪急阪神ホールディングスのコーポレートベンチャーキャピタルである、阪急阪神イノベーションパートナーズ投資事業有限責任組合から紹介を受けたことでした。プライベースを利用される、あらゆる世代のお客様に快適な移動時間を過ごしていただきたい、そのためにはどうすれば…と考えていた時に、松本さんとお会いしました。プライベースでIKOUポータブルチェアが使えたら、お子様連れのお客様にも安心してご乗車いただけるんじゃないかと思って」と加藤さん。


安定して座れるので、その座り心地の良さにご機嫌になる子どもも多いそう

松本さんも「私たちも交通機関へ導入できれば…と考えてはいたので、加藤さんからプライベースのお話を聞いて協力したい!となりました」とにっこり。

スタートアップ企業と阪急電車のコラボなんですね。この出会いから1カ月後には最初のIKOUポータブルチェアのプロトタイプが完成。順調に話が進んだそう。

実際にIKOUポータブルチェアを導入するにあたって苦労されたことなどありますか?


試作1回目を確認 取り付け方法に試行錯誤しました

「導入しようと動き始めたのが2023年2月のこと。その時点でプライベースの車両設計などはすべて済んでいたのですが、電車の座席側にもIKOUポータブルチェアを取り付けるための改良が必要になりまして…。(阪急電鉄の)技術部、座席メーカーさんとも検討を重ねました」と加藤さん。


IKOUポータブルチェアを設置するため、座席側に固定できる構造になっています

松本さんも「具体的な検討を始めた時点で、座席の設計もほとんど完成に近付いていたため、かなり急ピッチでした。IKOUポータブルチェア側も、既存の仕様のままでは安全に設置できないので、様々な企業の方と協働して改良を行いました。座面が傷まないよう板を挟むなど、皆で話し合いながら今の形になりました」。


試作2回目の様子 座席の設置方法を話し合います

IKOUポータブルチェアがある移動スタイルとは…

「プライベースへのIKOUポータブルチェア導入によって、障がいの有無にかかわらず、お子様のいらっしゃるご家族が、ストレスなくお出かけできるきっかけになれれば」と松本さん。小さな子連れ家族の外出を後押しするきっかけとして、今回、阪急電車へ導入されたことは大きな意味があると話します。

「IKOUポータブルチェアを起点に、座席指定サービスがお子様と保護者の方にも、安心してご利用いただけるものになればよいなと思います」と加藤さん。

〇ご利用にあたって
※お子様用ポータブルチェアは対応席(4B/4C、5B/5C)にしか設置できません。ご利用の方は、対応の座席を予約した上で、お子様と保護者の方が隣同士でお座りいただくようお願いします。
※ご利用される際は、車内でアテンダントにお声がけください。アテンダントが取り付けさせていただきます。

プライベースでのお子様用ポータブルチェアのご利用について、詳しくはこちら
https://www.hankyu.co.jp/privace/guide/child/

プライベース専属のアテンダント


プライベース車両には専属のアテンダントが常駐

プライベースには、専属のアテンダントを採用し、約20名が活躍されています。
アテンダントの方の上品な制服も印象的です。

プライベースのアテンダントはこんな業務にも

アテンダントの方はどのような業務をされるのでしょうか。

「先ほどのお子様用ポータブルチェアの設置もですが、お客様の座席のご案内などが主な業務になります。またプライベースでは空席がある場合は、車内で座席指定券を購入することもできますので、その発売なども行います」。

アテンダントの存在は、プライベースの快適さ・サービスの象徴でもあるように思います。

「そうですね。お客様により快適に車内で過ごしていただけるよう、全アテンダントがユニバーサルマナー検定を受講しています」。

また制服のデザインなどについては

「上品なブラウンを基調に、お客様のプライベート感を考慮し、プライベースの内装と調和する落ち着いた色合いのデザインとなっています」と加藤さん。

プライベースは、利用することで地球環境への貢献に!?

家族でのお出かけの充実やアテンダントサービスなどを紹介しましたが、プライベースにはほかにも取り組みがあると聞きました。


マルーンにゴールドが映えるプライベース

「はい、実はプライベースの編成はカーボンニュートラル運行をしています。走行にかかる電力を実質的に100%再生可能エネルギーでまかなっています※1。鉄道はもともと環境に優しい乗り物ですが、一層の環境負荷の低減に取り組むために、阪急電鉄では省エネ車両の導入や太陽光パネルの駅屋上への設置など、CO2排出量の削減につながる施策を推進しています」。

※1 関西電力の「再エネECOプラン」を活用し、太陽光や水力発電などの再生可能エネルギーに由来する環境価値を付加した電気を使用します。


床に敷かれた絨毯も印象的なプライベース

今回のプライベースのカーボンニュートラル運行により、2025年には約7,700トンのCO2排出量を削減するのだとか。脱炭素社会の実現に向けて一歩前進する取り組みになります。

「お客様には少しわかりにくいことだとは思うのですが、プライベースを利用いただくことで再生可能エネルギーを身近に感じていただくきっかけになればと思います。プライベースをWEBサイトで予約くださったお客様に発行する領収書に、移動中のCO2排出量がゼロであったことも明示しています」。

プライベース予約サイトは下記から
https://privace.hankyu.co.jp/order/search.html
※領収書へのCO2ゼロ表記は、上記サイトで予約・購入した際のみ印字されます。

プライベースを利用するだけで地球環境への貢献につながるのであればうれしいですね。

まとめ

プライベースの「日常の移動時間をプライベートな空間で過ごす自分時間へ」のコンセプト通り、個を意識し、個人が快適に過ごせるためのサービスの印象が強かったのですが、プライベースで阪急電車が様々なSDGsに取り組んでいることもわかった取材となりました。

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