【阪急沿線おしらべ係 第57回】
阪急バスのユニークなバス停名の由来にせまる!

【2024年2月配信】

このコーナーでは、読者のみなさんからお寄せいただいた、阪急沿線でふと見つけた「気になるもの」や「面白いもの」などを、阪急沿線おしらべ係が調査します。

今回は阪急バスについて読者の方からこんな質問をいただきました。

「阪急バスに『よろづや』『発電所前』という変わった名前のバス停がありますが、名前の由来は何でしょうか?ぜひ知りたいです」

とのこと。
おしらべ係ではさっそく取材に出かけてきました。

tokko.jpg

阪急バスに関することならお任せ!プロフェッショナルに取材

今回、取材に伺ったのは豊中市にある阪急バスの本社事務所。
対応いただいたのは阪急観光バス梅田案内所センター長の中西さん、阪急バス経営企画部の村上さんです。


取材させていただいた(写真左から)中西基(なかにし・もとい)さん、村上晴信(むらかみ・はるのぶ)さん

最初にお話を伺ったお二人のプロフィールを簡単にご紹介します。
中西さんは1997年に、阪急バスのグループ会社の一つである阪急観光バスに入社し、阪急大阪梅田駅の阪急高速バスターミナルに併設された梅田案内所に勤務され、2013年から現職を務められています。阪急バスの路線の移り変わりや歴史にも詳しいという事で、取材にご協力いただきました。
村上さんは阪急バスに入社後、約7年間路線バスの時刻表、路線図などの作成や、バス停の維持管理などを担当。現在は広報を担当されています。

阪急バスを改めて知っておこう!

阪急バスは1927年創立、2027年に創立100周年を迎える阪急阪神ホールディングスグループに所属する大手バス会社です。大阪・京都・兵庫の2府1県に路線網を持っており、バス台数860両(うち一般路線バス815両)、運転士1,570人が所属。営業所も19(出張所など含む)あります(2023.09現在)。
グループ会社には、高速バス、空港リムジンバスなどを運行する阪急観光バスや車両整備を行う阪急阪神エムテック、阪急タクシーなどがあります。

阪急バスのSDGs取り組みの一つとして2022年4月に導入されたEV(電気)バスについてはこちらをチェック! https://cdn.hankyu-app.com/content/article/2022/article_08.html

「発電所前」バス停の名前の由来はどこから?


国道423号線にある「発電所前」バス停

まず「発電所前」の名前の由来から伺っていきます。
「発電所前」バス停は、阪急池田駅と豊能町にある余野(よの)を結ぶ東能勢線にあります。「発電所前」バス停の名前は1970年に廃止された余野川発電所が由来とのことです。


※拡大マップはこちらからご確認ください。
阪急池田駅から豊能町の余野に向けて走る阪急バス東能勢線の路線図

余野川発電所は1922年、阪急電鉄の前身である箕面有馬電気軌道によって余野川沿い(大阪府池田市)に建設されました。第二次世界大戦中の配電統制令によって関西電力に移管され、1970年まで稼働していた発電所です。

1959年の地図を使って余野川発電所の場所を確認してみたところ、阪急バスが走っているルート沿いに発電所の記号を見つけることができました。地図には発電所名は書かれていませんが、発電所の南側には現在の地図でも確認できる寺院・陽松庵も載っていることから、位置関係からみて、発電所記号の場所は余野川発電所で間違いないと思われ、バス停の名前の由来になったと考えられるとのことです。


5万分の1 地形図 京都及大阪(共16面)(1959年)

お話を伺った中西さんは、高校生の頃に余野川沿いを走る路線バスで通学していて「当時、発電所はすでに閉鎖されていたのですが、バスの車窓から発電所の建屋跡が見えていました」とのこと。
また、「発電所前」バス停から余野方面へ2つ進んだ「水源池」バス停は、発電所で使用する水を引き入れていた場所だったことが名前の由来になっているそうです。
とても興味のあるお話ですが、「発電所前」バス停周辺は見通しが悪い山道で、歩道のない道が続きます。ハイキングなどで歩くのは危険な場所ですので、見に行かれる場合は阪急バスの車内から見学されてはいかがでしょうか。

「よろづや」バス停の名前の由来はどこから?

次は「よろづや」バス停の名前の由来を追っていきます。
バス停があるのは宝塚市北部、JR武田尾駅と上佐曽利(かみさそり)を結ぶ武田尾線です。


※拡大マップはこちらからご確認ください。
JR武田尾駅から上佐曽利を結ぶ阪急バス武田尾線の路線図

謎に包まれたままの「よろづや」バス停の名前の由来

「“よろづや”は、漢字で書くと“万屋”。生活に必要ないろいろなものを販売しているなんでも屋さんという意味で、バス停の名前の由来も万屋ではないかと推測できます。ですが、根拠となるような店舗があったかなど確かな資料は見当たらず、あくまで個人の仮説ですが…」と村上さん。
「よろづや」バス停については、いつから現在の場所にあったかなど、詳細が分かるものは何も残っていないそうです。

名前の由来が〝万屋″と推測される理由を路線バスの歴史から探る

根拠は不明とのことですが、村上さんが名前の由来を万屋と推測されている理由について伺ってみました。ここからは阪急バスの歴史についてたどっていきます。
元々「よろづや」バス停があるのは、西谷自動車(1924年)から阪急田園バス(1997年)、2019年に阪急田園バスと合併した阪急バスが運営してきた路線上です。

下の資料は現在の阪急バスの変遷(1919~1957年)を表すものです。


阪急バスの変遷(阪急バス30年史より)

阪急バスの前身は約20もの事業者からなる!?

全国の路線バスの始まりは明治とされ※、大正、昭和初期を経て、第二次世界大戦以降に発達、大都市だけでなく、どの地方都市にも路線バスが走り、市民の交通手段になった歴史があります。

※バスの歴史について詳しくは
https://www.bus.or.jp/business/history/

上記の写真上部に記載のある、昭和初期を見てみると「中村」や「上田」といった個人名が確認でき、個人事業主や株式会社など様々な形でバス事業に参入していたことを示しています。阪急バスも約20もの事業者がその前身として存在していたことも分かります。


1950年代の阪急バスの阪急電鉄池田駅前バス停付近(阪急バス提供)

各地で大小の事業者が競合していた路線バス

現在の阪急バスの路線に大小の事業者が入り混じっていたということは、大阪府豊能町史にも書かれています。
豊能町史によると、現在の豊能町光風(こうふう)台・ときわ台あたりにあった吉川村(1956年廃止)には、京都府亀岡町(現京都府亀岡市)に本社を置く能勢妙見自動車株式会社と、東郷村(現豊能郡能勢町)に本社を置く能勢自動車株式会社の2つの路線が誕生したと書かれています。


1930年式フォード(阪急バス50年史より)

また、東能勢村(現豊能郡豊能町)では1924年に元教員の方が免許を取得して、アメリカ・フォード社製の8人乗りバス3台で盛運社を始めたと記録されています。

「今回ご紹介したのは現在の阪急バスの路線の一部ですが、阪急バスが現在の姿になるまで混沌としていた様子が分かります。そんな事情ですから、バス停の設置、バス停名の決定なども現在よりも自由であり、由来について記録が残っていないところも多くあります」と村上さん。
さらに村上さんは「バス停を設置する際には、大きな施設の近くや人が集まる所が候補になりやすいです。「よろづや」バス停についても、お店があって、人がたくさん集まっている場所だったのでバス停が設置されたのではないだろうか?とも想像できますよね」とのこと。

「よろづや」バス停に関する情報をお持ちの場合はおしらべ係まで!

「よろづや」バス停に関しては、残念ながら、由来に関する資料に行きつくことはできませんでした。もし、皆さまの中に名前の由来に関して、資料などを持っている、知っているという方がおられましたら、おしらべ係までご連絡ください。

バス停にまつわる疑問、質問を解決!

ここからは話題を変えて、私たちが普段利用しているバス停の標柱(バス停の位置を示すポール)の維持管理、最新のバス停など、おしらべ係が疑問に思っていたことを取材させていただきました。

設置前の標柱はどのように保管されている?


保管庫に置かれた完成前の標柱

写真はバス停名などが入る前の標柱です。使用する際に、バス停名や時刻表などを入れて完成、現場に設置されます。


左側がバス停名を入れる前、右側がバス停名を入れた後の標柱

阪急バスの標柱は阪急電車の部品製造も手掛けられているメーカーで作られているそうです。

バス停標柱の設置方法は道路埋め込み型、設置型の2種類が主流


バス停の標柱の足元にもぜひ注目を!

阪急バスのバス停の標柱の設置方法は大きく分けて2種類です。標柱が道路に埋め込まれている埋め込み型(写真左)と、土台にセメントや石などを利用した設置型(写真右)。多くのバス停で埋め込み型が採用されているそうです。
また、上部の円板は標柱に対して斜めに取り付け、乗務員からもよく見えるように工夫しているとのことです。


標柱に対して円板は斜めに取り付ける

阪急バスでは、バス停名の変更や休廃止などで使わなくなった標柱の円板をイベントなどで販売しており、その希少性から人気の商品になっているそうです。

最新のバス停をレポート!進化するバス停

阪急バスの路線の中で一番新しくできたバス停は、吹田市にある「佐井寺南が丘(さいでらみなみがおか)」バス停。このバス停は、車道と歩道とバス停の境界部分にこれまでにない工夫が施されています。


左:一般的なバス停「山田樫切(かしきり)山」、右:最新の「佐井寺南が丘(さいでらみなみがおか)」のバス停。

一般的なバス停は、車道と歩道の境界について左の写真のように両端を斜めにした状態ですが、右の「佐井寺南が丘」バス停は、道路との境界が山型に切り込まれています。


左:一般的なバス停、右:最新のバス停

このことにより、歩道のより近くにバスが停車できるようになり、お客様の安全と乗り降りのしやすさを実現しています。

最新技術を搭載したハイテクバス停が阪急池田駅に!

次にご紹介するのは最新技術を導入し、試験的に設置している標柱です。その標柱のあるバス停が、阪急池田駅前にあると聞き、見に行ってきました。


ボード型のスタイリッシュな印象のバス停

阪急池田駅前のリニューアル工事に合わせて設置された最新のバス停は、LEDを採用し、時刻表とバスの走行位置を確認することができます。
バス停に表示する情報は本社のサーバーと接続されており、事故や悪天候によりバスが運休する場合など突発的な事態が発生してもリアルタイムで情報を配信することが可能になりました。今後運用していく上での課題などを検証していく予定です。

お客様、乗務員から見やすいと高評価な標柱

次にご紹介するのは「JR茨木駅」バス停です。「お客様、乗務員から見やすいと評価の高いバス停がJR茨木駅にあります」と教えていただき見に行ってきました。


JR茨木駅前のバスターミナルに設置された標柱

こちらのバス停の標柱、よく見かける標柱と何が違うか分かりますか?
標柱の上の円板にバス停名ではなく、番号が表示されています。JR茨木駅前のバスターミナルは阪急バスのほかに、近鉄バス、京阪バスが停車し、バスターミナルも広いため、目的のバス停を探すのが大変との声が多いそうです。
そこで阪急バスが独自の取り組みとして始めたのが、円板に乗り場の番号を表示したこと。このことにより、お客様から「遠くからでも阪急バスの乗り場が見わけられるようになった」「乗り場を探すときに便利」という声が届くようになったそうです。乗務員からも「バスを停める場所がわかりやすくなった」と好評です。

阪急バス難読バス停の読み方クイズに挑戦!

それでは最後に、今回の調査依頼内容に関するクイズです。

次の5つのバス停名のうち、何個読み方が分かりますか?
阪急バスに実際にある難読バス停名にぜひ挑戦を!

1. 伊孑志
(宝塚営業所ほか・宝塚市)
2. 神足
(大山崎営業所・長岡京市)
3. 内瀬
(柱本営業所・茨木市)
4. 尼谷
(茨木営業所・箕面市)
5. 紫合
(猪名川営業所・川辺郡猪名川町)

クイズの答えはこの記事の最後に!

取材を終えて…

阪急バスのバス停名に関する取材から、路線バスの歴史や最新のバス停まで話が広がり、とても興味深い内容となりました。取材を通して、改めてバスが地域の方の大切な交通機関であることを実感することができました。皆さんもバスをご利用の際には、ぜひバス停にも注目してみてください。

なお、阪急バス(路線バス)の時刻表や接近情報は阪急バスホームページや阪急沿線アプリで確認することができます。ぜひご覧ください。

阪急バスホームページ
https://www.hankyubus.co.jp/
阪急沿線アプリ
https://www.hankyu.co.jp/app_lp/

なお、阪急バスでは、路線バス運転士を募集しています。
大阪、兵庫、京都の3府県で安全な運行と高いサービスをご提供し、お客様から「ありがとう」を直接聞くことのできる、とてもやりがいのある仕事です。
バス車両を運転したことがない初めての方にとっても、安心の教育プログラムがありますので、ご興味がある方はぜひ採用サイトをご覧ください。
https://www.hankyubus.co.jp/saiyo/


クイズの答え

最後まで記事をお読みいただきありがとうございます。阪急沿線おしらべ係では、阪急電鉄だけでなく、阪急沿線アプリで連携しているグループ会社(能勢電鉄、阪急バス、阪急タクシー)に対する質問も受け付けています。

みなさんも気になるものや知りたいことが見つかった時は、ぜひ「阪急沿線おしらべ係」まで質問をお寄せください。

こちらの記事もおすすめです!

阪急沿線おしらべ係の
最新記事をチェック!

「おしらべ係」のトッコが調査した記事を、定期的に追加しています。阪急沿線アプリのインストールや阪急沿線情報誌TOKKの公式X(旧Twitter)のフォローで、最新情報を簡単にいち早くチェックできます。ぜひご利用ください。

「おしらべ係」トッコ

「おしらべ係」のトッコが調査した記事を、定期的に追加しています。阪急沿線アプリのインストールや阪急沿線情報誌TOKKの公式X(旧Twitter)のフォローで、最新情報を簡単にいち早くチェックできます。ぜひご利用ください。

最新の記事一覧を見る