【阪急沿線おしらべ係 第39回】
豊中市・吹田市を走る阪急バスの新型車両。地球にも、お客様にもやさしい最新バスを調査

【2022年8月配信】

このコーナーでは、読者のみなさんからお寄せいただいた、阪急沿線でふと見つけた「気になるもの」や「面白いもの」などを、阪急沿線おしらべ係が調査します。

今回は阪急バスについて読者の方からこんな質問をいただきました。

「私は千里に住んでいますが、最近、新しいデザインの阪急バスが走っているのをみかけることがあります。あのバスは普通の阪急バスとは違うのでしょうか?」

とのこと。

阪急バスのデザインといえば、クリーム色と水色の車体に赤、青、白のトリコロールカラーのラインが特徴です。読者の方が見かけられたのはどのようなバスだったのか?おしらべ係ではさっそく取材に出かけてきました!

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新しいデザインの阪急バスが走っているのは千里営業所の管轄エリア

今回、伺ったのは吹田市津雲台(つくもだい)にある阪急バスの千里営業所です。

千里営業所は豊中市北部から中部を中心に、吹田市・箕面市・伊丹市の一部区間を走行するバスの運行管理、定期券などの乗車券の販売を行っており、125両のバスを保有しています。


バスの運行管理に使用されている掲示板

車両がずらりと並ぶ車庫のどこに読者の方が見かけられたバスがあるのか、他のバスと何が違うのか、詳しくお話を伺っていきたいと思います。
※非公開施設のため、見学は受け付けておりません。

ご案内いただいたのは阪急バス経営企画部の細見さん。
今回ご質問いただいたバスについて聞いてみたところ「今年の4月から一般路線を走行しているEV(電気)バスを見かけられたのだと思います」とお話しいただきました。


※新型コロナウイルス感染防止対策を行いながら、取材・撮影をしております。

それではさっそく、最新型バスのご紹介です!

よく見かける阪急バスとは全く違ったデザインのバスですね。こちらは「ひととまちに優しい阪急バス」をモットーに、環境を守り、次世代へと繋ぐイメージをトリコロールカラーのラインで有機的に表現したもの。車体を取り巻くようにデザインされたトリコロールカラーのラインは電気回路をイメージされているそうです。

このバスはデザインが新しくなっただけでなく、SDGsの取り組みの一つとして導入されたEV(電気)バスです。

社内で特別チームを編成して臨んだEVバスの導入

現在、阪急バスが所有するEVバスは2台、そのうち1台は豊中市・吹田市を走る千里ニュータウン線(千里中央~桃山台~南千里~津雲台~阪急山田)で運行、もう1台は大阪大学のキャンパス間を結ぶ学内専用の連絡バスとして運行しています。
※運行ルートの詳細についてはこちらから
https://www.hankyubus.co.jp/blog/220407ev.html

このEVバスは、大阪大学と関西電力、阪急バスとの産学連携による最適な充放電システムの構築に向けた実証実験に合わせて導入したもので、2020年4月にプロジェクトがスタート、社内では細見さんを含め、9名のメンバーが集まり特別チームが編成されました。2021年10月から大阪大学の各キャンパスを結ぶ学内専用の連絡バスとして実証実験を開始し、ここで得られた知見を活かして、2022年4月から一般路線での運行を開始、その間ずっと特別チームのメンバーがこのプロジェクトに関わってこられたそうです。
※実証実験終了後もEVバスの運行は継続されます。


2021年9月30日、大阪大学構内で行われた実証実験開始セレモニーの様子

関西初となる完全ゼロエミッション化に成功

EVバスの走行中は大気汚染物質やCO2を排出しないゼロエミッションとなりますが、営業所内での充電の際にも再生可能エネルギー100%の電力(※)を用いることで、関西のバス事業者として初めてとなる完全ゼロエミッション化を実現しました。

※関西電力の「再エネECOプラン」(関西電力が日本卸電力取引所より調達した、太陽光・水力・風力発電などに由来する環境価値を付加した電気を使用するプラン)を利用することにより、実質的に再生可能エネルギーによる電力として取り扱うことができます。

充電時間は約5時間、1回の充電で1日分の走行が可能


千里営業所内に設置された急速充電器

千里営業所の事務所横にはEVバス専用のスペースが2台分設けられ、大きな充電器が設置されています。

充電はバスの車体後方にある充電口に充電器のコードと接続して行います。夜間の電力を使用し、約5時間の充電で翌日1日分の走行が可能です。
阪急バスが所有する2台のEVバスで削減できるCO2排出量は年間約66t。杉の木約4,700本が1年間に吸収するCO2に相当するそうです。

災害時には急速充電器としても使用できるEVバス


災害時は外部給電器を使用するとEVバスから外部へ電力供給が可能。

また、災害などによる停電時には、EVバスは非常用の大容量バッテリーとして使用できるそうです。EVバスの蓄電池から営業所の照明や通信機器への電力を供給できる体制も整えられています。

2021年9月30日、大阪大学構内で行われた実証実験開始セレモニーの際には、会場で使用するマイクやスピーカー用の電気をEVバスから供給しました。

さらに、大阪大学の学生から人気なのが車内に設けられたUSBの差し込み口です。「バス車内でスマホなどが充電できるとは!長距離バスのようですね。」とのお声をいただき、各キャンパス間を移動する際はEVバスを選んで乗車するという学生の方もおられるそうです。

滑らかな走行、排気ガスのにおいや騒音もなく快適な車内環境

EVバスはモーターを回転させて動く仕組みなので、従来のバスのように加速・減速時の変速によるショックが少なく、走行も滑らかで、乗り心地がとても安定しています。また、従来のバスと違って、停車中でもアイドリングの必要がないため、信号などで停車中でも環境に影響を与えず空調を使用することができます。排気ガス特有のニオイもありません。
こちらはぜひ実際に乗車して体験してみてください。

乗る人も、運転する人も、環境にも。みんなにやさしいEVバス

お客様にも、環境にも、やさしいEVバス。そしてさらに、運転士さんからもEVバスは好評です。加速時のショックをこれまでは運転士さんの運転技術によって軽減していたそうですが、EVバスはスムーズな走行が可能なため、運転士さんからも運転中の負担が少なくなったと嬉しい声が寄せられているそうです。

これまでの知見を他のバス会社へも共有、EVバスも毎日快走


バスの後部にはEVバス実証実験に関わっている団体の紹介ステッカーを掲出

最後に関西初のEVバスで完全ゼロエミッション化に向けた取り組みの中で最も大変だったことをお聞きしました。
「一番苦労した点は、充電規格の違いです。EVバスの車両は中国メーカーのBYD社製ですが、急速充電器と電力使用量などを管理するエネルギーマネジメントシステムは国内のメーカーのものを使用しています。バス本体、充電器、エネルギーマネジメントシステム、この3つをどうマッチングさせるかという点に苦労しました。協力会社の方とともに、問題点を改善しながらプロジェクトを進め、運行を実現しました。
現在は、関東の事業者さんはじめ各地のバス会社からの見学なども増え、自分たちの知見を共有できるようになりました」と細見さんは言います。

このEVバスの運行は阪急阪神ホールディングスグループが推進する社会貢献活動「阪急阪神 未来のゆめ・まちプロジェクト」の重点領域である「地域環境づくり」につながる活動です。

「阪急阪神 未来のゆめ・まちプロジェクト」の詳細はこちらから。
https://www.hankyu-hanshin.co.jp/yume-machi/index.html

関西で初めてスタートした完全ゼロエミッションのEVバス運行を取材して

自家用車などは電気自動車、ハイブリット自動車など新商品を目にする機会も多いですが、今回の取材では、路線バスなどでもこれから盛り上がっていくように感じました。運行は平日が14便、休日は12便となっています。EVバスにぜひ乗車してみたいという方は、下記よりルートや時刻表をチェックすることができます。
https://www.hankyubus.co.jp/blog/220407ev.html

お近くにお出かけの際は一度乗車してみてください。

最後まで記事をお読みいただきありがとうございます。阪急沿線おしらべ係では、阪急電鉄だけでなく、阪急沿線アプリで連携しているグループ会社(能勢電鉄、阪急バス、阪急タクシー)に対する質問も受け付けています。

みなさんも気になるものや知りたいことが見つかった時は、ぜひ「阪急沿線おしらべ係」まで質問をお寄せください。

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