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【阪急沿線おしらべ係 第56回】阪急電車の車内の広告(ポスター)などはどのように交換している?

【2024年1月配信】

このコーナーでは読者のみなさんからお寄せいただいた、阪急沿線でふと見つけた「気になるもの」や「面白いもの」などを、阪急沿線おしらべ係が調査します。

今回は電車に乗車すると目にする車内の広告について、こんな質問が寄せられました。

『電車内のポスターの貼り替え現場を見てみたい!』

電車の車内には様々な広告が掲出されています。今回は電車の広告にはどのようなものがあるのか、またどのように貼り替えているのかを調査してきました!


車内で吊られている広告・中吊

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阪急電車の車内の広告にはどんなものがある?

普段見かける阪急電車の車内の広告ですが、実際にどのような種類があるのでしょうか。


阪急電車内の中吊の枠(広告を吊っていない状態を撮影)


ドア横額面広告の枠 広告がないとこのような感じに

広告の種類としては、みなさんが電車内の広告としてイメージする中吊、車両扉の横にある額に入ったドア横額面広告、それ以外にもドアステッカーや車両扉上のディスプレーに流れる車内映像の動画タイプの広告などがあります。
ほかに1編成の車内広告を独占して掲出できる広告貸切列車“sankyuトレイン”や中吊広告の片面を1社で独占して掲出できる“サンクス”といった広告企画も。

この「サンクス」という広告企画は、大きな美術展や学校案内でよく使われている広告です。すべて同じ広告で統一されるので、多くのお客様に強い印象を与えることができます。また、“sankyuトレイン”などは、現在好評運行中のラッピング列車「ちいかわ号」が概ね該当するようです。
電車内すべてが同じ広告なので、その広告の世界観を醸成(じょうせい)できる“sankyuトレイン”は、お客様に強い印象と共にワクワク感ももたらしてくれますね。

【参考記事】
【阪急沿線おしらべ係 第52回】ちいかわ×阪急電車 コラボレーション企画 ラッピング列車ができるまでを調査!
https://cdn.hankyu-app.com/content/article/2023/article_09.html

いろんな広告の種類などを調べて行くと、「大阪梅田 新駅開業50周年」を記念した特別列車(2023年11月末で運行終了)が走るという情報を入手。

この特別列車では、開業当時の写真を使用した中吊で1車両すべて異なるデザインに。また、ドア横額面にも同じデザインを使用することで、電車内でのお客様の目線を中吊に誘導するように考えられているそう。
また驚く点は、ヘッドマークや中吊などのデザインを阪急電鉄社員自身が手掛けたこと。すでにこの特別列車の運行は終了していますが、どんなデザインだったのかはこのレポートで楽しんでくださいね。
ということで、この電車のポスター貼り替え現場を、今回特別に取材させていただくことにしました!

阪急電車に掲出する広告を交換する現場へ潜入!

今回は神戸線の西宮北口駅近くにある西宮車庫(一般公開はされていません)で交換作業を取材させていただきました。


阪急西宮北口駅すぐそばにある西宮車庫の入口

作業を担当するのはこの道20年のベテラン!


大阪梅田 新駅開業50周年 神戸線のヘッドマークがついた特別列車

広告の貼り替え作業をされるのは、西宮車庫でこの業務に就いてから20年になるベテランの作業員さん。


貫通路上にある額面に広告を入れ替える様子

「子どもの頃から阪急電車が大好きで、西宮車庫で電車清掃のアルバイトをしていたことがあるんです。その縁でこの職に就きました。それから数えると、もう西宮車庫で働きはじめて30年になります」とのこと。

作業は4人でローテーション

この作業をされている方はほかにもいらっしゃるのでしょうか。


ドア横額面に広告を入れる様子

「阪急電車の各車庫に数名ずつ在籍しており、西宮車庫は私を含めて4人の作業員で担当しています。基本的に作業は1人で1編成全部を担当します。仕事のスケジュールは電車の運用に合わせています」。
たった4人で神戸線の電車の中の広告をすべて入れ替えているんですね(ドア上の動画のデータの入れ替えは除く)。通常車内の広告は3~4日から掲出されています。


表裏重ねて中吊を吊ります

広告の交換は、すべて車庫内で作業するそうです。大半の電車は毎日車庫に帰ってくるので、そのタイミングで広告の交換も行われているのだそうです。確かに駅や走行中に中吊広告を交換する現場って見たことがありませんよね。
また作業スケジュールも、ダイヤ乱れなど電車の運行状況により変動もあるので予定通りに進まないことも多いのだそうです。


広告の交換作業以外にも、広告に抜けや破れなどがないか週に1回点検することも大切な業務の一つ

職人技の交換技術、バッグはお手製

今回は、作業員の方に交換作業をしていただきながら取材させていただいたのですが、丁寧にお話いただきながらその作業は流れるよう。今回、作業をする中吊広告は通常のB3(515×364㎜)サイズを横に2枚繋いだ、ワイド版と呼ばれる横に長い広告で横幅は1,030mmもあるもの。これほど大きな中吊をバッグからスッと皺(しわ)なく2枚抜き出し、両面を合わせて(表裏同時に吊るため)美しくサッと吊下げバーに挟み込んで吊っていくのはかなりコツがいる作業です。その素早い交換に、思わず目を引かれます。


広告枠レイアウトの指示書に基づき貼り替える広告を準備します


広告枠レイアウトの指示書に基づき貼り替える広告を準備します

このお仕事をされるに当たって研修などはあったのでしょうか。

「最初に2週間ほど研修があります。早く吊れるのは、私の身長が高いこともあるかもしれません。中吊は、吊る位置が高いので小柄な方は脚立を使って吊っていくんです。私は身長が180cmあり、脚立なしで作業ができるのでスムーズに作業が進められることもあると思います」とのこと。


貼り替え予定の広告がすべて入ったバッグ

また気になったのは、作業時に持っておられるバッグです。実はこのバッグ「使い勝手がよいものがなかったから」とご自身で作られたそうです。この中に、1編成(8両)分の広告がすべて入っているそうです。

「事前に吊っていく順番どおりに、自分でバッグに入れて準備しています。こうすることで、よりスムーズな交換ができるんですよ」とにっこり。


広告を貼り替えやすいよう自らバッグに順番にセット

1編成分の中吊を持ちながら作業するのは至難の業。私もこのバッグを持たせてもらいましたが、簡単に持ち上げることができない重さです(後で計測させていただいたところバッグは約2kgありました)。

それでもこの中吊やドア横広告を全部持ちながら進める今のスタイルが、「一番スムーズに作業ができるので、重さは気にならない」とのこと。


補修しながら大切に使い続けているバッグとステッカー広告を貼るための工具

実際にどのぐらいの早さで吊っている?

それでは実際中吊を吊る時間はどのぐらいなのかを計測してみました。

1 中吊に掲出する広告を両面に重ねて吊り下げ用バーにセット

2 吊下げ用バーに挟みこみ、留め金をかける

3 次の中吊をバッグから抜きセットしながら、次の吊り下げ用バーの下へ移動

中吊広告以外にも、ドア横額面、貫通路扉の上にある額面などで広告紙面をセットする作業の繰り返し…
それに要する時間は、1車両で20分!

今回の作業では1車両に中吊12枚(表裏同時に吊るため作業は6回)、ドア横額面12枚、貫通路上額面2枚というボリュームなので、1か所につき約1分で作業している計算になります。


額面に広告が引っかからないよう丁寧に入れ替えます

「今回の中吊は紙質がやわらかくツルツルして吊りにくかったので、少し時間がかかったかもしれません。大体1編成(8両)2時間程度で終了しています」と一言。

広告紙をセットするだけでなく、歪んでいないかなどの確認作業もあるのに、一か所につき1分程度でセットしていく作業員さんのすごさがわかります。

デジタル化が進んでも中吊はあり続けて欲しい

この道20年という大ベテランの作業員さん、今まで印象的だった広告などはあるのでしょうか。
「最近のことになりますが、私は阪神タイガースのファンなので、阪神タイガース優勝の広告が印象的でした。阪急電車で阪神タイガース優勝の中吊広告を吊れると思っていなかったので、本当にうれしかったです」と笑顔に。


大阪梅田 新駅開業50周年の特別列車の車内

このお仕事をしていて大変なこと・うれしかったことなど教えていただけませんか。
「作業する中で、紙質のやわらかさなどで額面フレームに引っかかるなど入れにくい広告や吊りにくい広告もありますが、力仕事でもないため大変というほどではありません。それより、お客様がまじまじと広告を見ている姿を見ると本当にうれしいです」と一言。そして、20年にわたって阪急電車の中でお仕事をしていても、「阪急電車のマルーンの色、木目調のデコラパネル、アンゴラ毛の緑のふわふわの座席はやっぱりいい」と思われるそうです。


2024年夏にデビューする座席指定サービス「PRiVACE」の中吊

「他社の電車に乗ってもやはり目が行くのは広告のこと。どんな広告があるのか、阪急にはない広告だなあと思いながらついつい見てしまいます。デジタル化が進んで中吊が減っているところもありますが、私は中吊を吊るのも見るのも好きですし、楽しいですね。2024年にデビューする阪急電車の新型車両のイメージ図が報道された時も、真っ先に見たのは中吊やドア横など紙の広告枠があるかどうか(笑)。これからもいろいろな広告を吊っていきたいと思います」と電車に掲出する広告への熱い思いを話してくれました。

<参考資料>阪急電鉄 座席指定サービス PRiVACE
https://www.hankyu.co.jp/privace/

<参考記事>NEWS RELEASE 新型車両2300系・2000系を2024年夏より導入します
https://www.hankyu-hanshin.co.jp/release/docs/ff140cb722dfcbc0d5f8628afd6fb8e24e4ae61a.pdf

まとめ

普段何気なく見ていた中吊が、このようにして貼られていたことを知る取材となりました。最近、電車の中ではスマートフォンでSNSやゲーム、動画視聴をする方が多いですが、改めて中吊などに記載のあるイベント開催情報などで情報を得たり、予定を立てるなど広告を楽しみにしていることにも気づけました。
電車に乗っている間だけでもスマートフォンやタブレットを置いて、広告や車窓に目をやる…そんな時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

みなさんも気になるものや知りたいことが見つかった時は、ぜひ「阪急沿線おしらべ係」まで質問を寄せてくださいね。

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