【阪急沿線おしらべ係 第51回】
大阪梅田駅ホームの先頭にある花壇は、いつ、だれがお手入れしている?
【2023年8月配信】
このコーナーでは読者のみなさんからお寄せいただいた、阪急沿線でふと見つけた「気になるもの」や「面白いもの」などを、阪急沿線おしらべ係が調査します。
今回は、読者の方からこんな質問が届きました。
阪急の大阪梅田駅のホームにある花壇のお花に癒やされています。
この花壇はいつ、だれがお手入れしているのでしょうか?
大阪梅田駅ホームの車止め花壇
「大阪梅田駅ホーム上にあるお花」といえば、大阪梅田駅ホーム上の先頭部分にある花壇のことですね。3階改札口を入ったところに設置している花壇は通称で「車止め花壇」や「バーストップの花鉢」などと呼ばれることもあるそうです。
大阪梅田駅のホームには全部で9カ所の車止め花壇があり、季節に合わせた植物が置かれています。
車止め花壇は、大阪梅田駅ホームの改札口側に設置されています
読者の方からの質問にお答えするべく、さっそく大阪梅田駅に調査へ行きました。
大阪梅田駅で取材したのは…
大阪梅田駅の車止め花壇の植物を管理しているのは、「阪神甲子園球場のグラウンド整備の技術がすごい!」ということでたびたび話題になる、阪神園芸株式会社の方々です。今回は、阪神園芸株式会社 施設管理部 大阪管理課の3名に取材させていただきました。
大阪梅田駅の車止め花壇を管理している阪神園芸のみなさん
まずは3人のプロフィールをご紹介します。
写真左:園田幸浩さん。2019年入社。現在は管理職として阪急全線の駅構内の緑地管理全般を総括されています。
写真中央:佐藤知子さん。2020年入社。阪急全線の駅構内に加えて、その周辺にある自然公園などの緑地や商業施設、マンションなどの緑地管理を担当しています。植物の剪定や水やり、除草などの現場作業も行います。
写真右:吉田摂予(せつよ)さん。2021年入社。阪急全駅の駅構内にある植物の剪定や水やり、除草などの現場作業を行っています。
大阪梅田駅の車止め花壇に関する主な役割分担は、植物の管理計画を策定するのが佐藤さん、その計画に従って植物の入れ替えやメンテナンスなどの現場作業を行うのが吉田さん、それらの業務全体を総括しているのが園田さんとのこと。
大阪梅田駅の車止め花壇の植物を入れ替える一日に密着
7月のとある日、大阪梅田駅の植物の入れ替え作業に密着させていただくことになりました。さて、どのように大阪梅田駅の雰囲気が変わっていくのか、とても楽しみです。
大阪梅田駅の車止め花壇は、基本的に約2週間に1回植物を入れ替えているとのこと。入れ替え作業は、いつも2~6名で行っているそうです。
6月下旬~7月上旬頃まで設置していたカランコエなどのお花
植物の入れ替え作業は、朝7時からスタート。朝早い時間帯ですが、大阪梅田駅のホームにはすでに多くのお客様が往来しています。「作業の際には、通行中のお客様の安全が第一です。お客様がつまずかないように床には荷物を置かないなど、安全には十分に気をつけています」と吉田さん。
まずは、車止め花壇に設置されている植物を搬出します。
車止め花壇に設置されている植物をケースに入れて搬出
大阪梅田駅の車止め花壇の植物はすべて鉢植え。植物を複数まとめて運べるケースや「ふご」という大きなカバンに入れて搬出します。
分厚くて耐水性のあるビニール素材の「ふご」を使っています
9カ所の花壇の鉢植えをすべて搬出します。植物の搬出は30分ほどで完了。その後、車止め花壇や植木鉢の受け皿の掃除に取りかかります。
モップなどを使い掃除します
この作業と同時進行で、新しい植物の搬入が始まりました。
車止め花壇に7月に設置されるのは観葉植物。大阪梅田駅の車止め花壇は約2週間に1回植物を入れ替えていますが、7月は例外的に約1か月間、暑さや湿気に強い観葉植物を設置するとのこと。
新しい植物が搬入されました
植物の梱包材を外し終えたら、いよいよ新しい植物を設置していきます。9カ所の車止め花壇それぞれにどの植物を何個ずつ置くかは、事前に佐藤さんと吉田さんが決めています。
はじめに車止め花壇に受け皿を並べ、植物を配置する数と場所の目星をつけます。
最初に受け皿を並べておくと、植物の配置がわかりやすく効率的なのだそう
そこに、鉢植えを一つひとつ設置していきます。
手分けして新しい植物を設置していきます
事前に植物の設置数を決めているものの、実際に置いてみた印象を見て、スタッフの感性で配置の最終調整を行っているとのこと。
時にはスタッフ同士で相談しながら設置作業を進めます
園田さん「植物には“顔”があります。植物が大きく、表情豊かに見えるのが顔(正面)。私も初めて上司に言われたときには何のことだかわかりませんでしたが、経験を積むうちに、どこが顔なのか感覚的に分かるようになるんです。車止め花壇の植物に関しても、この感覚は大事だと思っています」
写真左の植物は葉っぱがワカメのような形のタニワタリアカキ、右中央の黄緑色の植物はフィロデンザナドゥーゴールド
園田さん「植物の配置にはセンスも必要です。その点、佐藤さんや吉田さんは繊細な感性で細かい部分にもこだわってくれています。佐藤さんが鉢植えの配置をミリ単位で調整しているのを見かけたことがあり、驚くと同時に感心しました」
佐藤さん「私は普段から『細かいところにもよく気が付く』と言われることがあります。そういう細部にもこだわるという部分を、植物を魅力的に見せることにもいかしたいと思っています。屋外の現場では、なぜか雑草もよく目に留まるので役に立っています(笑)」
写真下段はドラセナゴッド、写真上段はアスプレニウムユニコーン
こうして、新しい植物の設置が完了しました。今回新たに設置された観葉植物は4種類。爽やかなグリーンが印象的で、涼しさを感じさせてくれますね!
新しい植物の設置が終わったら、鉢植えに水やりします。
小さなジョウロを使って水やりします
また、植物に傷んでいる箇所があれば剪定も行います。
剪定バサミを使い植物の傷んでいる部分をカットします
12時頃、すべての作業が終了しました。
作業の途中で、「見てください、かわいい新芽が出ています!新芽ならではの、透明感がある神秘的な色合いですよね」と吉田さんの植物愛があふれる場面もありました。
写真中央のうすいグリーンの葉が新芽
吉田さんが話すように、新芽などの植物の細部に注目してみると、新しい発見があるかもしれませんね。
ビフォー(6月下旬~7月上旬頃までの植物)
カランコエなどの花で華やかな雰囲気でした
アフター(7月上旬~8月上旬頃までの植物)
アスプレニウムユニコーンなどの観葉植物に入れ替わり、涼しげな雰囲気に変わりました
「次の期間(8月上旬~8月末頃まで)も、暑くて湿度の高い環境でも育ちやすい観葉植物を設置しますので楽しみにしてください」とのこと。
植物を入れ替えた後は、吉田さんが定期的に訪れて、植物への水やりや傷んだ箇所の剪定、車止め花壇の掃除などの日常的なメンテナンスを行います。
吉田さんは「元気のない植物があれば、バックヤードに移動して、しばらく休ませることもあります」というように、臨機応変に対応しているそうです。
大阪梅田駅の車止め花壇の植物選びのポイント
ここで、佐藤さんに大阪梅田駅の車止め花壇の植物を選定するときの基準をお聞きしました。
佐藤さん「設置する植物の種類は、阪急電鉄の担当者と意見交換しながら、植物を手配してくれている協力会社と決めています」とのこと。
植物を選ぶポイントの一つは、できるだけ季節感のある植物を選ぶこと。例えば、春はカランコエやベゴニア、マーガレット、夏はあじさいや観葉植物、秋はガーベラ、冬はポインセチア、年始は門松などの豪華な正月飾りといったように、その時々で変わります。
大阪梅田駅のホームは屋内のため、日陰でも育ちやすい植物を選ぶことも多いそうです。
ちなみに「過去にお客様からの反響が特に大きかったのは、どのような植物でしたか?」とたずねると、
「クリスマスの時期のポインセチアは、お客様や駅員の方にもご好評いただいています。『ポインセチアの赤や白など花のように見えるところは、実は葉の一種なんですよ』とお伝えすると、驚かれる方もいらっしゃいます」と佐藤さん。
2022年クリスマスシーズンにポインセチアを設置していた様子。とても華やかですね 写真提供/阪神園芸
門松などの豪華なアレンジメントが設置されるお正月も反響が大きいとのこと
初夏には、お花と背の高いグリーンを組み合わせたデザインもありました 写真提供/阪神園芸
佐藤さんは「作業していると、通行中のお客様から『この花きれいだね』と話しかけていただく機会が多いので、次の植物選びの参考にしています」と続けます。また、スマートフォンのカメラを植物にかざすと、その特徴や詳細を教えてくれるアプリ(GreenSnapやGoogleフォト)などを活用して、佐藤さん自身も日々勉強を積み重ねて情報収集しているとのこと。
こうして話を聞いてみると、次はどんな植物が飾られるのだろう?とワクワクしてきますよね。
担当者が語る、大阪梅田駅の車止め花壇へのこだわりとは
担当者それぞれのこだわりもお聞きしました。
吉田さん「車止め花壇という小さいスペースで、人の目に留まるようなきれいな仕上がりにできるか、という見映えには特にこだわっています。
大阪梅田駅のホームにある車止め花壇は、段差のない平らなタイプの花壇と、高低差のある2段タイプの花壇があるのにお気づきでしたか?それぞれの花壇でも、設置する植物の印象が少しずつ違うんですよ」
段差のない平らなタイプの車止め花壇
高低差のある2段タイプの車止め花壇
吉田さんによると「植物を配置するときは、手前は背の低い植物で、奥にいくほど背の高い植物を置くのが一般的なセオリーです。ただ、植物の種類や場所に合わせてセオリーとは違う配置をすることもよくあります。
過去には、段差のない平らなタイプの車止め花壇では、全体にメリハリを出すため、あえて真ん中に背の高い植物を置き、その周りを背の低い植物で囲む配置にしたこともあります。
高低差のある2段タイプの花壇は、華やかな舞台のようなイメージで、植物が大きく見えるように意識して配置しています」とのこと。
それぞれの車止め花壇の細かな違いにも注目してみてくださいね。
植物越しに阪急電車を撮影するのもおすすめ
まとめ
大阪梅田駅の車止め花壇の植物は、阪神園芸のスタッフの方が定期的に植物の入れ替えを行い、その後も日々こまめにメンテナンスをしていることがわかりました。車止め花壇には、そのスタッフのこだわりや経験、愛情が存分に込められていたのですね。
「大阪梅田駅、造花だと思っていたら生花なので驚きました」「都心駅のホームに植物があるなんて素敵」と、植物に癒やされるとお客様に好評なのだそう。
シーズンごとに入れ替わる植物を見て季節感を味わったり、至近距離で観察して植物の一つひとつの個性の違いに着目したりするのも楽しそうです。
みなさんも大阪梅田駅を訪れた際には、ぜひ車止め花壇の植物に注目してみてください。
ちなみに、8月1日~31日までの1か月間、阪急電車の貫通路の上部に阪神園芸さんの広告ポスターが掲出されています。こちらもぜひチェックしてください。
阪神園芸の貫通路広告ポスター掲出の様子(2023年8月1日~31日掲出)
阪神園芸の貫通路広告ポスターのデザイン(2023年8月1日~31日掲出)
阪神園芸株式会社についてはこちら
https://www.hanshinengei.co.jp/
阪神園芸株式会社の施工事例はこちら
https://www.hanshinengei.co.jp/works/
大阪梅田駅に関する別の記事はこちら
https://cdn.hankyu-app.com/content/article/2023/article_01.html
大阪梅田駅の構内図はこちら
https://www.hankyu.co.jp/station/umeda.html#facility
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