【阪急沿線おしらべ係 第45回】
駅のホームで人が多い時に車両の扉をおさえてくれる黄色い服の人について知りたい!

【2023年2月配信】

このコーナーでは読者のみなさんからお寄せいただいた、阪急沿線でふと見つけた「気になるもの」や「面白いもの」などを、阪急沿線おしらべ係が調査します。

今回は阪急電車の駅のホームで見かけるスタッフについて、こんな質問が寄せられました。

『駅のホームで人が多いときに車両の扉をおさえてくれる黄色い服の人について知りたい。』

この質問をいただいて調査したところ、「黄色い服の人」は「ホーム案内スタッフ」という職種の方と判明(「黄色い服」はホーム案内スタッフの制服でした)。今回は通勤・通学など阪急電車を利用する時に見かける、ホーム案内スタッフの仕事内容について調べてきました。

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やさしい雰囲気の首席助役 瀬川さん(左)とホーム案内スタッフの福永さん(右)

今回、取材させていただいたのは阪急電鉄 運輸部 西宮北口駅管区 首席助役の瀬川大揮(せがわだいき)さん、ホーム案内スタッフの福永航洋(ふくながたかひろ)さん。瀬川さんは阪急電鉄神戸線の西宮北口駅管区に所属する駅の運営管理を担当。また、福永さんは阪急沿線の大学に通う大学4年生で、ホーム案内スタッフとしてのキャリアは3年目というベテラン。ホーム案内スタッフ内でリーダーも務めておられます(ホーム案内スタッフは、アルバイト契約のお仕事です)。

※新型コロナウイルス感染防止対策を行いながら、取材・撮影をしております。

ホーム案内スタッフってどんなお仕事?

黄色い制服を着た人といえば、お客様にスムーズにご乗車いただくための誘導案内や「この電車と隣の電車ではどっちが早く着く?」といった質問に答えてくれる「頼りになる人」の印象です。

今回、普段は入れない西宮北口駅にあるホーム案内スタッフの方の休憩所へお邪魔しました!ここでホーム案内スタッフは黄色の制服に着替えてから、自分の時計の時刻合わせやその日の注意事項をチェックしたりするとのこと。さらに、首席助役からはその日に沿線で開催される催しや臨時列車などの特別な注意事項などが伝えられます。

ホーム案内スタッフは、どのようなお仕事をされているのでしょうか。

「ホーム案内スタッフは、大学生や専門学校生などで構成されています。車両の扉にお客様や荷物が挟まっていないか、線路上にお客様が転落されていないかなどの安全を確認し、車掌や駅にいる社員と連携したり、ホームでお困りのお客様への案内などが主な仕事です」と瀬川さん。

どの程度の時間や期間、勤務されているのですか?

「お客様が多い朝の7~9時、そして17~20時が主な勤務時間です。多くて週5~6回、学校の授業の都合で週3回程度の人もいます。それ以外にも臨時で勤務することもあります」と福永さん。

西宮北口駅管区ではホーム案内スタッフを、西宮ブロックと塚口ブロックの2つにわけていて、福永さんがリーダーを務める西宮ブロックには、17人のホーム案内スタッフが所属しているそう(塚口ブロックには10人が所属)。瀬川さんとホーム案内スタッフのリーダーである福永さんが協力して、各ホーム案内スタッフをどの駅に勤務させるかを割り振るなどの業務も担当しているのだそうです。

休憩所にはホーム案内スタッフの制服がたくさん!

「西宮ブロックでは、1駅を1人で担当することもあります。西宮北口駅の今津線宝塚方面行きのホームは、1カ所しかない階段にお客様が集中するため、誘導するのが難しい駅なんです。また学生さんの利用が多い甲東園駅や門戸厄神駅なども同じ理由で経験豊富な人にお願いしています。逆に西宮北口駅の神戸本線上りホームは、お客様自身がラッシュに慣れておられるのか、ホーム案内スタッフとしては対応しやすい場所になります」とリーダーを務める福永さんならではのノウハウも。


福永さんの仕事道具

「仕事をしやすいようにとホーム案内スタッフの中には、お客様により詳しくご案内するために資料を自作する方もいて、それをみんなで確認・共有しています。列車が各駅を出発する時刻を秒まで確認できる資料や、時計、路線図、また注意事項などを書くメモやペンも必須です」と福永さんの仕事道具を見せてもらいました。

ホーム案内スタッフになったきっかけ

子どもの頃から電車が大好きだったという福永さん。ホーム案内スタッフになったきっかけも電車が大好きだったからでしょうか?

「はい、私は根っからの阪急電車ファンです。阪急電車のマルーンカラーがなぜか大好きになって…。昔から駅の構内放送に憧れていたんですが、この仕事を始めてアナウンスの難しさに気付きました」。

アナウンスする内容は決まっていても、スムーズに聞きとりやすくお伝えする難しさを実感したと言います。

「アナウンス内容を臨機応変にその場で変えることもあります。また内容を聞き取りやすくするためには、アナウンスするスピードにもコツがあります。特にラッシュ時間帯は、お客様もアナウンスの内容を何度も聞いて慣れておられることが多く、駅の自動放送と内容が重複することもあります。不快な思いをされないように、でも安全のためどのくらいの音量でお伝えすべきかの見極めが大切。その判断を常にされている駅員さんはやっぱりすごいと思います」と福永さん。

その言葉を聞いて「(福永さんは)経験もあるし、アナウンスも落ち着いていて聞きとりやすく、とても上手なんですよ」と褒める瀬川さんの言葉に照れる福永さん。お二人の信頼関係が垣間見える瞬間でした。

何より大切なことはお客様の安全

お客様への配慮は駅員さんと変わらない、ホーム案内スタッフのお仕事。そんな福永さんが、勤務中に心がけていることはあるのでしょうか。

「私がこの仕事に就いたのは、先輩からの紹介でした。最初に先輩から教わった『電車は便利なものだけど、多くのお客様の大切な命を運ぶもので、安全が何より大切』という言葉はいつも頭に入れて仕事をしています。ホーム案内スタッフ内でも、代々受け継いでいきたいですね。安全のためなら大きな声も出しますし、それによって不快な思いをされるお客様もおられるかもしれません。でもやはりお客様の安全には変えられません」と強い眼差しで答える福永さん。


いつも安全を最優先している福永さん

その言葉を受けて瀬川さんも続けます。「鉄道を運行する上で、安全を最優先することは、私たちの共通認識なんです」。

「点字ブロックの上を歩いておられるお客様や、イヤホンをつけて歩いておられるお客様、歩きスマホをされているお客様には、事故防止の観点からお声をかけてご協力いただいています」と福永さん。


情報の共有や連携をこまめに行うことも大切

安全に鉄道を運行するためには、お客様はもちろん、ホーム案内スタッフ自身の安全も大切です。ホーム案内スタッフには年2回、必ず安全衛生教育の受講を義務づけているそう。

「私たち監督する立場の社員が講師となって、約2時間講義し、作業上の注意事項や、過去のトラブル事例などを紹介し、普段の業務に活かしていただいています」と瀬川さん。

ホーム案内スタッフが気になること

ホーム案内スタッフは車両の扉がお客様や荷物に当たらないように扉をおさえたりしますが、最近はお客様の案内が主な業務になっているのだとか。


ホーム上の安全を確認する福永さん

「西宮北口駅今津線宝塚方面行きのホームは2階コンコースへの階段が列車の先頭の1カ所のみとなるため、お客様はどうしても階段に近い先頭車両に多くご乗車されます。今津線の各駅で勤務する時は、分散して電車にご乗車いただけるようにご案内しています。また、同じく今津線の甲東園駅は、バスから乗り継いで電車をご利用されるお客様が多い駅。そのため、駆けこんでご乗車される方が多い駅です。ホームでご案内していると、バスのエンジン音が聞こえる度にドキドキしています」と福永さん。

そんな仕事熱心な福永さんは、阪急電車以外の電車に乗っていても車両の扉が開閉する時に点滅するランプや列車運行上の安全対策がどうしても気になってしまうとか。「一度旅行先で車両の扉に荷物が挟まってしまった方を見て、思わず手を左右に振ってしまいました(手を左右に振るというのは、阪急電車では車掌さんに異常を知らせる動作)」。

その際は、福永さんが知らせたことでトラブルもなく電車が発車して安心したといいます。

ホーム案内スタッフの仕事で得たもの


電車が発車した後の安全を確認

福永さんはホーム案内スタッフの業務の中で、接客が一番好きなのだそう。電車や駅についてご案内する時や忘れ物の捜索、車いすをご利用されるお客様のご対応など、お褒めの言葉をいただいた時には、やりがいを感じると話してくれました。

「私はそれほど社交的ではなかったんですが、この仕事をして初対面のお客様とも臆することなく話せるようになりました。お客様と接することの楽しさに気付けたのは私にとって大きな変化でした」。

そんな福永さんが大学卒業後の就職先に選んだのも接客業とのこと。ホーム案内スタッフの経験を活かして鉄道会社に就職しないのかと尋ねると

「(電車が好きという)趣味は趣味のままおいておく方がいいかなと思って」と笑います。


線路上への落とし物はマジックハンドを使って拾います

瀬川さんも「ホーム案内スタッフは、お客様と接する最前線にいるんです。『どっちの電車が早く到着するの?』などのご質問を受けることや、忘れ物の捜索、体調がすぐれないお客様への対応などにあたることもあります。ホーム案内スタッフは大変な仕事だと思いますが、阪急電車の安全で正確な運行には、とても重要で欠かせない仕事なんです」という言葉に、福永さんも大きく頷きました。

人が好き、電車が好きという方、ぜひホーム案内スタッフに応募してみてはいかがでしょうか。

まとめ

今回の取材では、「黄色い服を着た」ホーム案内スタッフの仕事ぶりに驚かされました。もともと、駅で働いておられる方には感謝の気持ちを持っていましたが、今回福永さんの無駄のない動作を見たり、仕事に対する考え方に触れたり、自分の言葉で話す安全への思いなどをお聞きして、アルバイトを超えた考えや仕事ぶりにさらに尊敬の念も抱くようになりました。

まもなく大学を卒業し、就職されるので駅で福永さんをホーム案内スタッフとして見かけることはなくなってしまいますが、瀬川さんや福永さんのような方々が日々働き続けているからこそ、阪急電車が安全で正確に運行できていると改めて実感しました。

かけこみ乗車や歩きスマホなどは、自分だけでなく周囲の方や電車の運行にも影響が及びます。安全安心な運行のため、協力しなければと感じました。

阪急電鉄では、駅や電車内でのマナー向上を呼びかける活動「Goodマナー×Goodライフ」を行っています。

https://www.hankyu.co.jp/story/manner/

またマナー広告の動画やポスターの裏側などをおしらべ係で調査した記事はこちら

https://cdn.hankyu-app.com/content/article/2019/article_10.html

最後まで記事をお読みいただきありがとうございます。阪急沿線おしらべ係では、阪急電鉄だけでなく、阪急沿線アプリで連携しているグループ会社(能勢電鉄、阪急バス、阪急タクシー)に対する質問も受け付けています。

みなさんも気になるものや知りたいことが見つかった時は、ぜひ「阪急沿線おしらべ係」まで質問をお寄せください。

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