【阪急沿線おしらべ係 第43回】
梅田のシンボル・赤い観覧車の裏側に潜入!

【2022年12月配信】

このコーナーでは読者のみなさんからお寄せいただいた、阪急沿線でふと見つけた「気になるもの」や「面白いもの」などを、阪急沿線おしらべ係が調査します。

今回お寄せいただいた質問はこちら。

梅田のHEP FIVEの観覧車って、あんなに高いところにありますが、どうやって維持管理しているのでしょうか?

梅田のランドマーク、HEP FIVEの赤い観覧車。

大都会に堂々とそびえ立つHEP FIVEの観覧車と梅田のビル群の景色は、見慣れた日常の風景になっていますが、よく考えたらビルの上に観覧車が立っているって、すごいことですよね。

遊園地の観覧車よりもはるかに高い場所にありますが、どうやって維持管理されているのでしょう?

そもそも、あの巨大な観覧車はどうやって動いているのでしょうか?

そんな疑問に答えるべく、調査に行ってきました!

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HEP FIVEの観覧車の歴史

現地に行く前に、まずはHEP FIVEの観覧車の歴史を紐解いていきましょう。

HEP FIVEの観覧車ができたのは、1998年11月のこと。

エンターテインメント性あふれるショッピングセンターを梅田に作るべく、当時あったビル「阪急ファイブ」と「ナビオ阪急」をリニューアルし、「HEP FIVE」と「HEP NAVIO」が誕生しました。
そしてその目玉とも言えるのが、HEP FIVEの屋上に設置された大観覧車でした。

直径75メートル、最上部の高さ106メートル、4人乗りのゴンドラが52台。

オープン初日の先頭のお客様は早朝3時から並ばれたそうで、その後も連日大にぎわい。ビルの外にまで行列ができるほどの反響でした。


HEP FIVEがオープンした当時の阪急梅田駅(現在の大阪梅田駅)の広告。改札上の「○」「×」が懐かしい。

ちなみに……「HEP」とはどういう意味かご存知でしょうか?

HEP=Hankyu Entertainment Park(ハンキュウ エンターテインメント パーク)の頭文字をとった言葉で、まさにエンターテインメント(娯楽)をお客様に提供したい、という思いが込められています。

ビルの外観をよく見てみると、
HEP FIVEとHEP NAVIOのビルにまたがるようにして大きく書かれているんですよね。
(今まで気づかなかった!)

では「FIVE」の由来は何でしょうか?

おしらべ係では「阪急三番街、阪急17番街、阪急32番街…いったい何の数字なのか?」という調査を過去に行ったことがあります。
(記事はこちら→【第7回】阪急○番街、何の数字?)

「FIVE」は、ビルの階数にしては足りないですし、番地が由来なのでしょうか?
答えは、先述の通りHEP FIVEの前身となるビルが「阪急ファイブ」で、「阪急ファイブ」の運営に当時の阪急東宝グループの5社が関わっていたことから、「5」=FIVEとなったそうです。

HEP FIVEの観覧車はどうやって動いている?

11月某日、クリスマスツリーが設置され、クリスマスムードでいっぱいのHEP FIVE。

今回お話を伺ったのは、HEP FIVEをはじめ様々な商業施設を運営する、阪急阪神ビルマネジメント株式会社に所属する大塚規仁さん(左)と中川聡さん(右)です。

大塚さんは、学生時代に宝塚ファミリーランドでアルバイトとして勤務した後、引き続き社員として勤務。HEP FIVEの観覧車はオープン当時から24年にわたって担当しており、アミューズメント施設の整備の超ベテラン。HEP FIVEの観覧車は我が子のような存在です。
そんな大塚さんと共に働くのが、担当して7年目の中川さん。大塚さんから仕事のイロハを学び、7年の実務経験が必要な遊戯施設の検査員の資格試験に、来年挑むそうです。

では早速、お二人に観覧車の裏側を案内していただきましょう!

最初に案内していただいたのは、幅2メートル、奥行き1メートルほどの機械が設置された部屋。

観覧車を動かすために必要な油を送る装置で、タンクの中には約600リットルの油が入っています。

「ここが観覧車の心臓部です」

あの巨大な観覧車の規模からすると、もっと大きな機械で動いていると思っていましたが、意外とコンパクト!

「そうですよね、かなり小さいです。この油がホースを通り、HEP FIVEの10階にある観覧車へと送られます」

続いて、その観覧車へと移動。

厳重に管理された扉を通って連れてきていただいたのは、HEP FIVE7階の観覧車乗り場の真上。足元に目をやると、床の網目の隙間から乗り場が見えていて、高いところが苦手な人にとっては結構怖い……!

ここには、2つ1組になった直径50センチ程度の小さなタイヤが、観覧車に対して垂直に取り付けられています。

「先ほどの機械から送り出された油によってタイヤが回転して(①)、そのタイヤの回転する力で観覧車のフレームが動くんです(②)」

この装置が8か所あり、合計16輪のタイヤが、ギコギコと音をたてながら、ゆっくりと回転して、その動力で直径75メートルもの巨大な観覧車が動く。観覧車の仕組みは、意外にもシンプルでした。

日々のメンテナンスと特別な景色

さて、HEP FIVEの観覧車の調査にあたり、観覧車をじっくり観察していて気づいたことがあります。
観覧車の円の中心部分をよく見てみると……

ここ、人が立てそうですよね。
しかも、はしごのようなものも付いている!

まさか……お二人はここに上ることがあるんでしょうか!?

「月1回実施している定期点検の際には、毎回上っていますよ」

と、さらりと話す大塚さん。

月に1回の定期点検では、この長いはしごを上り、観覧車の中心から構造や接合部分に亀裂やゆるみといった不具合が生じていないか、モーターに異常はないかなど、丸一日かけて徹底的にチェックします。

さらに3カ月、1年ごとに、より精密な検査も実施しています。

「故障してからでは遅いんです。ほんの小さな不具合でも見つけて対処するのが、私たちの重要な役割です」

穏やかな大塚さんの顔が、真剣な表情に変わります。

24年間、大きな事故もなく毎日安全に動いているのは、最前線で働く方のどんな小さな変化も見逃さない鋭いまなざしと、蓄積された経験に支えられているからです。

ところで、安全を確保してお仕事されていると思いますが、高所での作業は足が震えてしまいそうです……。お二人は怖くないんでしょうか?

「ハハハ、もう慣れましたね!」と、大塚さんも中川さんも余裕の表情!
ただ、雨の日や風が強い日は、さすがに怖さを感じ、緊張感が高まるそう。

「でも、観覧車のあの中心から眺める景色が最高なんですよ」

と、頬を緩める大塚さん。中川さんも頷きます。

高所での仕事を終えて、ふと視界に入る梅田の風景。

梅田のランドマークを陰で守る使命感、
毎日安全に運転できている安心感、
お客様が笑顔で帰られる姿を見た時の喜び。

いろんな思いが駆け巡り、眺める景色は、担当者だけが味わえる特別なものでしょう。

ゴンドラの中にも秘密がある!

「それと、実はゴンドラの中にもいろんな秘密があるんですよ」と大塚さん。

ゴンドラの中の天井を開けて出てきたのは、何やら丸い金属のようなもの。

「これは制振装置で、万が一地震が発生してもゴンドラの揺れを抑えられるんです」

地震が発生した時、ビルの屋上にある観覧車は地上よりも揺れが大きくなることは容易に想像できますよね。
地震が発生すると、ゴンドラの天井に取り付けられたこの制振装置のおもりが左右に動き、ゴンドラの揺れを軽減する仕組み。特殊な場所にあるHEP FIVEの観覧車の隠れた特徴です。

さらに、椅子の下にも秘密が。

「座席の下に冷暖房のエアコンが付いているんですが、観覧車に冷暖房を導入したのは、HEP FIVEが日本初です」

昔は通風口などからゴンドラの中に自然の風を取り入れるのが一般的だったそうですが、ビルの上に建つ観覧車は、ゴンドラから物が落下しないよう密室にする必要があります。そこで、すべてのゴンドラにエアコンを設置。しかも万が一、1台に不具合があっても運転できるよう、1つのゴンドラにつき2台設置されていて、お客様が快適に過ごせる環境が整っているのです。

日常を忘れさせてくれる15分間の空中散歩

取材の最後に、何年ぶりかに観覧車に乗ってみました。

ワクワク、ドキドキ。ゴンドラがゆっくりと上昇していく時の高揚感は、大人になっても味わえます!

複雑に交差するメカニックな構造が写真映えしますね!

北方向に、阪急電車も見えます。

阪急阪神ホールディングスが検討を進めている「梅田ビジョン」の構想によって、この景色も将来は大きく変わるかもしれません。

「梅田ビジョン」の詳細はこちら

さて、乗り終わって気づいたことがあります。

なんとも言えない、すっきりとした気分になっている。

閉ざされたゴンドラの中から、一人で眺める見慣れたいつもの梅田の景色。
実は、ゴンドラの中にはBluetoothスピーカーが設置されていて、自分のスマートフォンをつないで好きな曲を流せば、もうそこは自分だけの空間に。

ミニチュアのようなビルや鉄道、車を見ていると、何だか自分の存在が小さく思えてしまうのです。

HEP FIVEの観覧車は、家族や友人とワイワイ楽しく乗るだけでなく、疲れた時や一人になりたい時、思いっきり泣きたい時など、気分転換にも最適。新たな観覧車の楽しみ方を発見しました。

まとめ

高さだけを競うなら、HEP FIVEの観覧車よりも勝る高層ビルが梅田にはあります。
ですが、誰にも邪魔されず景色も空間も独り占めできるのは、HEP FIVEの観覧車だけではないでしょうか。

「観覧車は若い子が多そう」「ひとり観覧車はちょっと恥ずかしい」と思われるかもしれませんが、観覧車にしばらく乗っていないという大人にこそ、体験してみてほしいなと思う取材でした。

<HEP FIVE観覧車 営業情報> ※2022年12月15日付情報

【営業時間】11:00~23:00、最終搭乗22:45

2022年12月31日(土)
通常営業
2023年1月1日(日・祝)
定休
2023年1月2日(月・振替休日)
通常営業

※営業内容を変更させていただく可能性がございます。
【搭乗料金】1人 600円(5歳以下無料)

HEP FIVE観覧車 公式ホームページはこちら

HEP FIVE 公式インスタグラムはこちら

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