【阪急沿線おしらべ係 第18回】
絶滅寸前!ゆるかわ「たぬきケーキ」とは
【2020年10月配信】
読者のみなさんからお寄せいただいた、阪急沿線でふと見つけた「気になるもの」や「面白いもの」などを、阪急沿線おしらべ係員のトッコが調査する「おしらべ係」。
今回は、昭和の懐かしいシリーズです。
以前おしらべ係で取り上げた、昭和の遺産「うどん自販機」を調査した記事は、たくさんの方に読んでいただきました。それと近いのが、今回取り上げる「たぬきケーキ」です。トッコがネットを徘徊していた時、偶然、「たぬきケーキのあるとこめぐり」という、たぬきケーキ専門サイトを発見。
たぬきケーキ研究歴約20年、全国のたぬきケーキを趣味で食べ歩く青森県の男性が、熱すぎない温度感でたぬきケーキの生息調査・情報発信を行っています。マニアックで面白いんです。
サイトによると、関西で生息が確認されているたぬきケーキのお店は5店舗。そのうち1軒が、阪急沿線にあるではないですか。
どんな風に作られているのか?
どんな味なのか?
一度この目で確かめてみたい。
たぬきケーキを捕獲しに、阪急電車に乗って調査に行ってきました!
たぬきケーキとは
まずはたぬきケーキについて、「たぬきケーキのあるとこめぐり」さんの調査結果を元に簡単に解説しましょう。
たぬきケーキとは、 昭和の時代、全国各地の洋菓子店で販売された、たぬきを模したケーキのこと。
写真提供:「たぬきケーキのあるとこめぐり」
上目使いでこちらをじっと見つめてくる。愛嬌のある姿が子どもたちに大人気のケーキです。
たぬきケーキの発祥は、1950年代中頃。日本のどこかのケーキ屋さんで誕生し、全国の町のケーキ屋さんに広まったとされています。
主に、スポンジ、バタークリーム、チョコレートを使って作られていることが多く、材料や作り方、形、表情は、お店によって様々でバラエティ豊か。
(左上から時計回りに)岩手「志たあめや」、愛知「エンペラー」、青森「チボリ洋菓子店」、宮崎「ベーカーズロイ」、北海道「北じま」、長野「翁堂」、高知「お菓子の山彦」、静岡「長崎屋洋菓子店」/写真提供:「たぬきケーキのあるとこめぐり」
一番多いのがだるま型で、ホールケーキをカットした三角型や四角型もあります。
1970年代には、どこにでもあったと言われるくらいメジャーなケーキだったそうですが、その後、コンビニの増加やスイーツの多様化、店主の高齢化による閉店など、時代の変化と共にたぬきケーキを作る店は減少しています。
関西で確認されているたぬきケーキの生息地はわずか5カ所。新たな生息地や新種のたぬきケーキが発見されることもあるそうですが、イベント的に作られることが多く、今、絶滅の危機にさらされているのです。
たぬきケーキに会いに、西宮へ
「たぬきケーキのあるとこめぐり」の生息地マップで見つけたのが、西宮にある「長崎伸栄堂」さん。
阪急阪神国道駅から国道沿いに西へ3分程歩いたところにあるお店です。
昭和42(1967)年に創業した「長崎伸栄堂」さん。店を始めた長崎出身の父親の後を引き継ぎ、息子の田尻 太さんが2代目として、たった一人で製造から接客まで行っています。
ショーウインドーに並ぶケーキは、イチゴショートやチョコレートムースなど、町のケーキ屋さんならではのラインアップと価格帯。懐かしさと安心感のある店内は、たぬきケーキがいそうな気配がプンプン漂っています。
しかし、ショーウインドーを探してもたぬきケーキの姿は見つかりません。
「今は予約販売のみなんです」と、田尻さん。
一体一体、作っていく必要があるたぬきケーキは手間と時間がかかり、田尻さん一人で作るには1日20個が限界。そのため予約限定にしているのですが、それも毎日埋まってしまうとか。
同店のたぬきケーキの生まれ年は定かではないですが、2代目が物心着いた時にはすでに店頭に鎮座していたそう。40年以上経て令和になった今も、変わらず人気です。
たぬきケーキ誕生の瞬間
まだ見ぬ、たぬきケーキ。一体、君はどんな姿なのか。
今回は特別に製造工程を見学させてもらうことに。
工房でのたぬきケーキ作りのスタートは、まず土台から。
生地はスタンダードなスポンジを使うお店が多いそうですが、長崎伸栄堂さんの場合、先代が本場・長崎で修業したレシピで作る、お店の看板商品・長崎カステラがベース。
ハチミツと米あめを使ったしっとりとしたカステラに、ラム酒漬けのドライフルーツ、チョコチップ、バタークリームを混ぜ、胴体と顔を成型します。
思いのほか、具材が豪華!
そして、顔の部分をギュッとつまんで目のくぼみを作り、
尻尾と耳をバタークリームで絞って、一旦冷蔵庫で5分程固めます。
次は、
チョコレートの滝行です。ドバーッと、たっぷり、全身にチョコレートを浴びるたぬき。
ツヤツヤです。
再び冷蔵庫で冷やした後、白目をバタークリームで絞り、チョコレートで目を描いて完成!
たぬきケーキは、表情を決める目を描く時が一番注意するポイントだとか。
「たまに目をウインクにしたりして、変えてみようかな~と思う時があるけど、誰も気づいてくれへんやろな...と思ってやってない」
そんな寂しいことはおっしゃらずに、ぜひやってほしい。
たぬきケーキの味
こうして生まれた長崎伸栄堂さんのたぬきケーキがこちら。
左から、たぬき(通常サイズ/120円)、親だぬき(3倍サイズ/350円)、特注(10倍サイズ/1,200円)。長崎伸栄堂さんでは、ひと口タイプの通常サイズから、親だぬき、「何倍でも作れるで」という特注サイズまで増殖可能。
ということで、マトリョーシカのように並べてみました。ちょっとジブリ感もある...?
早速編集部に戻って、みんなで実食。
「え?僕、切られるの?」と言わんばかりに見つめてくるたぬきケーキに、意を決して入刀。
味わってみると
「すごい素朴な見た目なのに...めっちゃ上品な味...!」
「えーおいしい!子どもにも良いけど、大人が食べたい」
と、子どものおやつというより、ティータイムのお供にしたくなる、という感想。「絶対おいしい!!!」と力を込めておっしゃっていた2代目の言葉も間違いありませんでした。
しかし、味のクオリティーと手間を考えると、お値段、安くないですか?
「作り続けるのは正直、大変です...」
それでも待っているお客さんのため、今日もまた、たぬきケーキが生まれているのです。
まとめ
「うちの店のオリジナルやと思ってた」と言う2代目。「たぬきケーキのあるとこめぐり」を見て、全国に存在することを知り、その多彩さに驚いたそうです。
もし、たぬきケーキの新種をどこかで発見されたら、「たぬきケーキのあるとこめぐり」の管理人さんまでご連絡を!
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