【阪急沿線おしらべ係 第8回】
西京極駅付近にある線路横の不自然な橋桁はなに?
【2019年9月配信】
読者のみなさまが、阪急沿線で見つけた「気になるもの」や「面白いもの」などを調査する「おしらべ係」。
前回は「阪急〇番街」の数字は、何が由来なのか?という謎を調査しました。
「言われてみれば知らなかった!」と思われた方が多かったのでしょうか、たくさんの方に読んでいただき嬉しい限りです!
さて、今回は鉄道ネタです。
阪急京都線の西京極駅に関する質問をいただきました。
【投稿①】
西京極駅西側の天神川に鉄橋の跡のようなものがあります。ここにはどんな歴史があるのでしょうか?
【投稿②】
西京極駅と隣の西院駅との間には、線路横に何も置かれていないスペースがあります。何のためにあるのですか?
というわけで、早速調べてみましょう!
阪急西京極駅へ行ってみましょう
西京極駅は、京都本線の桂駅と西院駅の間にある駅で、スタジアムや競技場、アリーナなどがある西京極総合運動公園の最寄り駅です。
サッカーやバスケ、女子野球といったプロチームの試合も行われていて、周辺住民の方以外にも多くの方が利用されます。
まずは一つ目の質問の、「駅西側にある鉄橋の跡のようなもの」を確認しましょう。
河原町方面行きホームのすぐそばで発見。
橋桁は、そのまま京都線の線路に繋がっていくように見えます。
撮影した場所の背中側には、河原町方面行きホームの臨時改札口が。
次に、河原町方面行きホームに移動してもう少し引きで見てみましょう。
1枚目と2枚目の写真を撮影した通路(写真の★印)も、天神川の橋桁から一直線につながっていますね。
謎の橋桁~通路~臨時改札口前、そしてそのままなぞるようにしてホームの北側を見てみると、
不思議なスペースがあるのを発見しました。
「線路横のスペース」とは?
もう一つの質問、「西京極駅と西院駅の間にある、線路横のスペース」を確認するため、そのままホームから西院駅側(河原町方面)を見てみると、
確かに、向かって左側の敷地にゆとりがあり、ホーム北側にあった不思議なスペースとも繋がっています。
よくよく観察してみると、
架線柱(電線を支える柱)が、本来なら本線の幅に合わせて設置されるはずが、
ちょうど線路1本分くらいのスペースを"わざわざ"とっているようにも見えます。
架線柱がある=線路を敷こうとした..? ということでしょうか!?
線路横の"余白スペース"がどこまで続いているのか、線路沿いを西院駅へ向かって歩いてみると、
西京極駅から約1kmのところで、線路横の余白スペースがなくなりました。ちょうど、阪急電鉄の変電所のあたりです。
壮大なプロジェクトの痕跡だった
現地を調査してみて分かったことをまとめると、
謎の橋桁~臨時改札口前~西京極駅ホーム北側~変電所までを繋ぐようにして、何かがあったのではないか?
ということです。
上空から見てみるとこんな感じ。
左が桂(梅田方面)側、右が西院(河原町方面)側です。
西院方面へ進みます。道路と交差する部分はえぐれていますね。
さらに西院方面へ進むと変電所の手前のところで、木が植えられた余白スペースが消えています。
(国土地理院撮影の空中写真<2008年撮影>)
橋桁と、1kmにも及ぶ余白スペースは、一体何のためにあるのか......?
阪急電鉄に残る資料をたどってみたところ、
実はここ、
貨物用の路線を敷設する計画の跡地
だったということが判明......!
西京極駅に貨物用の路線を敷設して、今の西院変電所の周辺一帯に、広大な貨物駅を建設する構想があったというのです。
用地は四条通りまで取得していて、ホームの一部は建設されていたそう。
現在の京都線は、今から91年前の昭和3年に、新京阪鉄道という会社によって敷設された淡路駅~京都西院駅の路線が前身です。
貨物駅の計画は、線路が敷かれた当時の話であり、新京阪鉄道時代の構想です。
昭和3年、建設中の西京極駅の写真があるのですが
(写真提供:大林組)
写真内の左側に、線路と並行して渡された橋桁が見えませんか?
架線柱の位置からも、冒頭の橋桁ではないかと思われます。
残念ながら、広大な貨物駅を作るという計画は、昭和4年頃からの経済不況の影響を受けて実現には至りませんでした。
その後も、貨物駅計画が形になることはなく、
線路を敷こうとした橋桁と敷地だけが残った
というわけです。
同じ頃に構想があった幻の計画
実はもうひとつ、昭和の始めに構想されていた計画があります。
新京阪鉄道の親会社・京阪電気鉄道が、新京阪鉄道の路線を名古屋まで延長するという大計画!
西京極駅から梅田方面へ4つ目の駅、西向日駅(当時は西向日町という駅名)から線路を分岐し、名古屋・熱田までを2時間余りで繋ぐというものでした。
しかしこのプランも、大恐慌により実現することはありませんでした。
多くの人が行き交う、にぎやかな大ターミナル駅になっていたかもしれない、西向日駅。
現在はというと↓
平日の昼間、広々とした地下通路やホームは静かで、人もまばら。
喧噪とはかけ離れた、ゆっくりと穏やかな時間が流れていました。
まとめ
幻に終わった西京極駅の貨物線計画と、西向日町駅から名古屋までの延伸計画。
もし貨物線が実現していたら、もし名古屋まで繋がっていたら...
今、どんな風景が広がっていたのでしょう。
歴史をさかのぼって、今を想像してみるのも面白いですね。
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