【阪急沿線おしらべ係 第53回】
ご神木がある駅・服部天神駅で執り行われる安全祈願祭を密着レポート

【2023年10月配信】

このコーナーでは、読者のみなさんからお寄せいただいた、阪急沿線でふと見つけた「気になるもの」や「面白いもの」などを、阪急沿線おしらべ係が調査します。

今回は宝塚線の服部天神(はっとりてんじん)駅をご利用の読者の方からこんな質問をいただきました。

「服部天神駅の大阪梅田行きホームには大きなクスノキがありますが、駅の方が管理されているのでしょうか?気になっていますので、ぜひ調べてください」

とのこと。おしらべ係ではさっそく取材をしてきました!

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駅舎の屋根をつらぬく服部天神駅のクスノキ


正面から見ると大迫力のクスノキ

今回、取材した服部天神駅は阪急電鉄宝塚線にある駅の一つで、大阪梅田駅から普通電車に乗って5駅目、所在地は大阪府豊中市です。


駅の中にそびえ立つクスノキは外からも確認できる大きさ

1910年3月10日、阪急電鉄の前身となる箕面有馬電気軌道が開業した際、「服部駅」として他の14駅とともに設置された服部天神駅(2013年に駅名変更)。開業当初からある最も古い駅の一つでもあります。

地元の要望で服部天神宮のご神木・クスノキが残された

まずは、なぜ駅のホームにクスノキがあるのかということからひも解いていきましょう!お話を聞いたのは服部天神宮の加藤宮司です。


服部天神駅の大クスノキの前で取材に応える加藤宮司

現在の服部天神駅のある場所は、箕面有馬電気軌道が開通するまで、元々服部天神宮の境内地でした。駅にある大きなクスノキは、服部天神宮のご神木として地元の方から親しまれていたとのことです。
「箕面有馬電気軌道が開通する際に、地域の方からご神木であるクスノキだけは残してほしいとの要望があり、当時の関係者で話し合って残すことが決まったと聞いています」と加藤さん。クスノキは箕面有馬電気軌道が開業した1910年から現在に至るまで枯れることなく、樹齢は100年を越えるとのこと。

阪急電鉄創立100周年を機に神棚を設置し、安全祈願祭がスタート


クスノキに祀られている神棚

この服部天神駅のクスノキで、毎年、阪急電鉄の安全祈願祭が行われていることをご存知でしょうか。
服部天神駅の安全祈願祭がスタートしたのは、阪急電鉄創立100周年となった2007年です。100周年を機に何か記念になることを始めようとの発案が阪急電鉄社内であり、服部天神宮の協力を得て、服部天神駅のクスノキに神棚を設置し、以降、毎年安全祈願祭が執り行われるようになったそうです。


服部天神宮の神職によって維持管理されているクスノキ

ご神木が服部天神宮のものであったという経緯から、毎月25日に服部天神宮の方が紙垂(シデ=しめ縄に垂らす紙のこと)を取り換え、半年ごとにしめ縄の取り換えも行っています。また、落ち葉を掃除するなど日々の清掃は駅員の方によって行われているそうです。

「ホームに大きな木がある駅といえば、京阪電車の萱島駅なども知られていますが、神棚を祀っているという点では、服部天神駅は全国唯一といえるのでは」と加藤宮司は言います。


ご神木に見守られて阪急電車は今日も安全運行!

8月24日の安全祈願祭に密着取材

安全祈願祭は、年に1回、約30分という限られた時間に執り行われているため、その現場に遭遇したという方は少ないのではないでしょうか?
この安全祈願祭はお客様の安全と電車の安全運行を祈願し、ご神木を祓い清めるもの。服部天神宮の夏天神祭の宵宮(よいみや)である8月24日、服部天神駅のホーム上で執り行われています。


苔(こけ)むしたクスノキの大木に真新しいしめ縄がかけられる

安全祈願祭の前には、服部天神宮の方によってしめ縄や神札が新しいものと交換され、その後、ご神木の前に祭壇や神饌(しんせん)を並べ、準備が整えられます。

安全祈願祭は13時から、電車の発着とお客様の往来に注意しながら斎行(さいこう)されます。

参加者は、服部天神宮の宮司・加藤さんほか4名と、阪急電鉄からは主に電車の運行業務に携わる社員や駅長など8名。厳粛な雰囲気の中進められます。

最初は修祓(しゅうばつ)です。祭典にあたり、神様をお招きする前にその場を祓(はら)い清める役目があります。ご神木、関係者、安全祈願祭が執り行われるホームにもお祓いが行われました。

続いて、お客様、電車の運行などの安全を願う祝詞(のりと)が読み上げられます。この後、巫女(みこ)による鈴授けがあり、最後に玉串の奉納です。

阪急電鉄から参加した関係者全員が順に神棚に玉串を奉納します。

約30分間の安全祈願祭を締めくくるのは加藤宮司からの言葉。「いつも電車が安全に運行でき、いつも変わらず安全祈願祭が行えることこそが何より大切」というお言葉が述べられ、安全祈願祭は終了しました。

服部天神宮の加藤宮司、阪急電鉄の担当の方にも、安全祈願祭への思いについて聞かせていただきました。

古き良きものを守る地域性がご神木を繋いできた

服部天神宮の加藤宮司は、「地元の方々は古きよきものを守ろうとする気持ちが強いと感じることが多く、そのおかげで100年以上もこのご神木が守られてきたのではないでしょうか。服部天神駅の穏やかな雰囲気はご神木があるからこそともいえます。今後もご神木の維持管理を行い、電車の安全運行を願いたいと思います」と言います。

100周年を機に生まれたご縁を大切にしたい

阪急電鉄で安全祈願祭を担当されている都市交通事業本部 えきまち事業部兼運輸部の橋田さんは、「これまで阪急電鉄が安全運行を維持できたのは、このご神木があるおかげかもしれません。阪急電鉄創立100周年を機にスタートしたこのご縁を、今後も大切にしていきたいと考えています」とのこと。

服部天神宮のご神木が残るもう一つの場所

取材の後、加藤宮司より服部天神宮のご神木が残されているもう一つの場所を教えていただきました。
服部天神駅の東側にある「うめかげレディースクリニック」の敷地の一部にご神木が残されており、木を包むようにして建物が建てられているのが印象的です。駅だけでなく、街の中にもご神木が保存されているのですね。

※見学の際はマナーを守って、周囲の方への迷惑とならないようお願いいたします。

安全祈願祭には一般の方は参加することができませんが、ご神木を見に行かれた際には周辺のスポットもぜひ訪れてみてください。
お出かけの際の参考に、服部天神駅周辺の情報についてご紹介します。

江戸時代には宿場町として繁栄

現在の服部天神駅周辺は江戸時代に、服部天神宮との間を通っていた能勢街道の宿場町として栄えました。その名残りでしょうか、今でも駅を挟んで東西に商店街が伸びており、懐かしさを感じるような風情を楽しみながら歩くのがおすすめです。

足の神様と知られる服部天神宮

安全祈願祭を執り行っていただいた服部天神宮は駅の東側にあり、駅から徒歩約3分です。
江戸時代から足の神様として知られる服部天神宮の境内には、人の背丈ほどもある大きな下駄が置かれています。また、わらじなど足にまつわるユニークな授与品も人気です。
持病の脚気(かっけ)に悩まされ、足がむくみ歩くことができなくなった菅原道真がこの地を訪れ、祈願したところ足の痛みが治ったという由緒により、江戸時代から「足の神様」として親しまれています。

服部天神駅周辺の情報やグルメなどについては下記で詳しく紹介していますのでご覧ください。
服部天神駅の駅情報
https://www.hankyu.co.jp/station/hattori.html

沿線おでかけパンフレット(三天神めぐり)
https://www.hankyu.co.jp/area_info/brochure/3tenjinm/index.html

グルメ情報
https://tokk-hankyu.jp/articles/feature/38220/

街の人とご神木の優しい関係を感じた取材

取材のために服部天神駅のホームに立っていると、乗車や降車の際にご神木に触っていく方や、ご神木の前に立ち止まって、手を合わせていく方がけっこう多いことに気づきました。ご神木と地域の方との関係性が表れた素敵な風景だと感じました。

最後まで記事をお読みいただきありがとうございます。阪急沿線おしらべ係では、阪急電鉄だけでなく、阪急沿線アプリで連携しているグループ会社(能勢電鉄、阪急バス、阪急タクシー)に対する質問も受け付けています。

みなさんも気になるものや知りたいことが見つかった時は、ぜひ「阪急沿線おしらべ係」まで質問をお寄せください。

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