【阪急沿線おしらべ係 第50回】
89周年!ながーく続く、阪急電鉄のイベントを調査!
【2023年7月配信】
読者のみなさんからお寄せいただいた、阪急沿線でふと見つけた「気になるもの」や「面白いもの」などを調査する、阪急沿線おしらべ係。
突然ですが、みなさんにクイズです。
- ・コロナ禍前の年間実施回数、約40回
- ・土日の開催時には、多い時には1,000人以上が参加
- ・今年で89周年
これ、何のイベントか分かりますか?
答えは……阪急ハイキング!
阪急ハイキングは、多くの皆様にご参加いただいているハイキングイベントです。
阪急電車のつり広告などでご覧になられて、名前をご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ですが、こんなにロングランのイベントであることは、ご存じないかもしれません。
スタートから89年を迎えた今、ふと湧き上がる疑問。
阪急ハイキングは、どうしてこんなにも長く続いているのでしょうか?
この記事を読めば、阪急電鉄に関するまめ知識がまた一つ増えるはずです!
歩いて道を切り拓く。阪急ハイキングはコースの開発からはじまった!
スタッフの帽子に刺繍された「Hankyu hiking since 1934」の文字
まずは、阪急ハイキングの歴史をさかのぼってみましょう。
昭和59年(1984)年発行の阪急電鉄社内誌に、阪急ハイキング50周年を記念して、スタート当時の担当者による座談会の様子が掲載されているのを発見!
それによると、
阪急ハイキングは、昭和9(1934)年に当時の社長・小林一三の指示によって「阪急ワンダーフォーゲルの会」としてはじまったとか。
担当者たちは、まずは六甲山エリアのコース作りから取り組むことに。
頼れるのは、主要な道しか載っていない5万分の1の地図と、六甲の山を知り尽くした地元の案内人だけ。自ら山を歩き回って道を確かめ、初級者向け、上級者向けとコースを設定していきました。
昭和10年頃 ポスター (阪急電鉄広報部所蔵)
座談会では、
“地図の通りに行ってみたら道がなかった”
“コースのルートを示す「道標(どうひょう)」を担いで登った”
“測量用の大きな器具を転がしていった”
……といった体力勝負のエピソードも。
自分たちの足でコースを開発していく、大変な苦労が見えます。
また、六甲山以外の山も、自分たちの足で歩いては地図に道を書き込み、オリジナルのコースを作っていったそう。その際にも、猟師さんにイノシシと間違われて鉄砲を向けられたり、道に迷って下山できず、動物の声を聞きながら夜明けまで過ごしたり……と、命懸けだった様子。
年代不明 パンフレット(阪急電鉄広報部所蔵)
1年の半分は山を歩いていたという、血のにじむような先人たちの努力の結果、たくさんの人達が阪急沿線の山へと訪れるようになりました。
また、阪急ハイキングが40周年を迎えた際には、阪急沿線情報紙TOKK(トック)でも特集が組まれ、担当者たちの様々なエピソードが公開されていました。
(TOKK創刊50周年記念サイトより)
現在の阪急ハイキングは、山のコースだけでなく、街を歩くコースも開催しています。
何よりも“安全”が最優先
阪急ハイキングが長く続いている理由の一つが、阪急沿線が立地に恵まれていることでしょう。
神戸から京都にかけて、山に沿って線路が走っている阪急電車は、駅から登山口までのアクセスが抜群に良くて便利です。
また、神戸線、宝塚線、京都線に観光名所も多く、街を歩くハイキングも楽しむことができます。
ですが、他にも何か理由はあるのでしょうか?
コースを開発した先人たちにならって、自分の足で確認すべし!ということで、ある日の阪急ハイキングに取材班が同行してきました!
阪急ハイキング担当 疋田敏明(ひきたとしあき)さん
この日は、王子公園駅最寄りの王子公園に集合して、摩耶山山頂と掬星台(きくせいだい)を目指す、約8キロメートルの山歩きコースの開催日。阪急電鉄 都市交通事業本部 えきまち事業部の疋田さんを筆頭に、スタッフ計15名がスタート時間の1時間以上前に集合し、ミーティングを開始します。
ハイキング当日のスタッフ資料
ハイキング実施の数日前には、必ずスタッフが下見に行き、コースの様子、休憩場所、配置場所、注意箇所などを確認、当日の流れをシミュレーションして実施要項を作成されます。
「何より大事にしているのは、参加者のみなさんの安全です」
と、真剣なまなざしで語る疋田さん。
スタッフは配られた実施要項を確認し、早速テキパキと準備を開始。
スタート受付場所の用意を始めるのと同時に、別のスタッフはコースを先に歩いて道標を貼っていきます。
参加者が迷わないよう、道標を貼っていくスタッフ
一方、スタート受付場所では参加者に注意事項の案内を行った後、スタッフが一人ひとりにコースを案内したマップを手渡して、スタート!
「気をつけて行ってくださいね!」と参加者を送り出す
事前のシミュレーションの通り、交通量の多い交差点や間違えやすい山道のポイントにはスタッフが立ち、参加者を安全に誘導。特に住宅街では、近隣の方のご迷惑にならないよう配慮しています。
信号のない横断歩道は特に注意
阪急ハイキングへの参加は、体調管理や水分・栄養補給、ハイキングに適した服装など、参加者自身が自己管理することが大事ですが、体調不良や落とし物など、予期せぬ事態が起こることも。
スタッフは無線でリアルタイムに情報連携を行い、疋田さんからの的確な指示のもと、臨機応変に動ける体制をとっています。さらに、スタッフたちは全員、消防署で救命講習を受講し、万が一の時のためにAEDも常備しています。
「ここまでスタッフを配置して、ハイキングを運営しているのは珍しいと思います」
山道に入る前に、息を整える参加者
参加者への声がけから、安全パトロール、山頂での下山時間の案内、道標の回収、最終パトロールまで、常に参加者が安心して歩けるように運営するのは、
「ここまで続いてきた阪急ハイキングを、みなさんにずっと楽しんでいただきたいから」
と、歴史の一部を担う疋田さんは思いを込めて言います。
ハイキング大好き!親しみやすくて頼もしいスタッフ
そんな、疋田さんの強力な助っ人であるスタッフたち。
無事に終了して笑顔のスタッフ
阪急ハイキングスタッフに応募し選ばれた、「たくさんの人にハイキングを楽しんでもらいたい!」という情熱と、数々の山を登ってきた体力に自信のあるベテラン勢です。中には、普段から山に関わる仕事をしている方も。みなさん、明るくて気さく!
常連の参加者とは「久しぶりですね~!」と声を掛け合う間柄
コースの途中、長い階段をひたすら登って疲れた頃、
「お疲れさまでしたー!もうちょっと行けば頂上ですよー!」と、声をかけてくれるスタッフ。
スタッフの励ましは、疲れた時に心強い!
「スタッフの方が声をかけてくれるから、頑張れるわー!」と、隣にいた参加者は気合いを入れ直し!
参加者の質問に答えるスタッフ
「みなさんに喜んでもらえるのがうれしいです」と、あるスタッフはやりがいのある仕事だと言います。
参加者には笑顔で丁寧に、安全確認のパトロール中は真剣な表情で。息の合ったチームプレーで参加者を支えています。
さらにこの日は、阪急ハイキングの新企画の初日!阪急ハイキングオリジナルの登頂記念の看板を用意して、山の頂上でスタッフが記念撮影のお手伝いをするというものです。
この日は、阪急ハイキングの新シリーズ「ピークハントハイキング」の1回目
「ハイキング担当になって3年目。コロナ禍でほとんど開催ができず、ようやく動き出すことができた」という疋田さん。こうした新しいアイデアもスタッフと一緒に考えながら、参加者にさらに楽しんでもらえる阪急ハイキングを目指しています。
自然にふれて、人の温かさにふれて、元気になれる
では、実際に参加者はどう感じているのでしょうか?
「いいカメラ持ってるね!」
と取材班に気さくに話しかけてくださった男性は、この日が初参加!
イキイキとした表情で山デビュー!
「結構しんどい!だけど、気持ちいいね~!」
と話しながら、笑顔で買ったばかりの登山靴と靴下を見せてくださいました。
「せっかく買ったから、これからたくさん使います!」
今回阪急ハイキングに同行して驚いたのは、一人での参加の方が多いこと!
確かに、一人で山に行くのは不安ですし、家族も心配します。阪急ハイキングは、マイペースに歩くことができるうえ、スタッフが見守ってくれて、ほかにもたくさん歩いている人がいるから、一人でも安心して参加できるんですね。
続いてこちらのお二人。
登山歴2年、阪急ハイキングは初参加
「阪急沿線に住んでいるので参加しやすいですね。今日のコースは決してラクではないけど、ちょうど良いコースでした。天気も良くて風も気持ち良い!」
と、仲良くハイキングを楽しまれていました。
最近ハイキングを始めたという二人は、
目指すは富士山登頂!
「初めて参加したんですけど、あちこちに道標があるのですごく安心して登ることができました!また参加したいです」
偶然にもお声かけした方は、初参加の方ばかり!
参加費がかからず、初心者でも気軽に歩きやすい適度なコース設定で、参加のハードルが低いのも、阪急ハイキングの魅力なのかもしれません。
若い頃からハイキングを楽しんでいたというこちらの女性は、お歳をお聞きすると81歳!
「阪急ハイキングは久しぶりの参加です。今日は大好きなコースでね。山頂まで登れました」と女性
「『イコ!イコ!手帳』のスタンプがあと1つですべて埋まるんですよ。次回参加するのが楽しみですね」
「イコ!イコ!手帳」とは、阪急ハイキングのスタンプ手帳で、参加ごとにもらえるスタンプを集めるとオリジナルグッズが手に入る、というもの。健康のために歩き続けるモチベーションにもなっているようです。
どうして長年続いている?参加して感じたその理由
快晴の中、参加者の方もスタッフも、イキイキとした表情が印象的だった同行取材!
最後まで安心して参加できたのは、スタッフが、息の合ったチームワークときめ細やかな運営で支えているからだったんですね。
コロナ禍を経た今、人と人との繋がりは、改めて大切だと感じられます。90年近く「阪急ハイキング」が多くの人に愛されてきたのは、自然の中をみんなで歩きながら、参加者同士、参加者とスタッフ等、人の温かみを感じられる場であることも、その理由の一つではないでしょうか。
「阪急ハイキング」では、山歩きコースだけでなく、初心者も参加しやすい街歩きコースも多数開催しているので、ホームページをチェックしてみてくださいね。
詳しくこちら↓
https://www.hankyu.co.jp/area_info/hiking/
最後まで記事をお読みいただきありがとうございます。阪急沿線おしらべ係では、阪急電鉄だけでなく、阪急沿線アプリで連携しているグループ会社(能勢電鉄、阪急バス、阪急タクシー)に対する質問も受け付けています。
みなさんも気になるものや知りたいことが見つかった時は、ぜひ「阪急沿線おしらべ係」まで質問をお寄せください。
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