【阪急沿線おしらべ係 第40回】
電車の先頭車両にある「連結器中間体」と書かれた箱には何が入っている?

【2022年9月配信】

このコーナーでは読者のみなさんからお寄せいただいた、阪急沿線でふと見つけた「気になるもの」や「面白いもの」などを、阪急沿線おしらべ係が調査します。

今回読者の方からお寄せいただいた質問はこちら。

先頭車両についている「連結器中間体」という箱には何が入っているのですか?

連結器中間体……??箱……??

トッコは初めて聞く名称です。毎日阪急電車に乗っていますが、どこにそんなものがあったかな……?と、何も思い浮かびません。みなさんはどうでしょうか?

連結器中間体とは何なのか?

箱とは何なのか?

トッコが調査に行ってきました!

tokko.jpg

阪急電車の基地、正雀工場へ

今回お話を伺ったのは、こちらのお三方です。

左から、阪急電鉄・技術部工場課 駆動係の多宮悠馬(たみやゆうま)さん、主任の寺本幸典(てらもとゆきのり)さん、係長の小林卓矢(こばやしたくや)さん。

※新型コロナウイルス感染防止対策を行いながら、取材・撮影をしております。

駆動係は、正雀工場で車両の連結器(電車を繋ぐ装置)や台車(マルーンカラーの車体を支える装置)の整備を担っている部署です。

連結器や台車を分解し、部品一つひとつの点検や修理、その工程の管理などの業務を行っています。

早速、正雀工場をお三方に案内してもらいます。

塗装を終えてピッカピカの車体や、

宙に浮かぶ阪急電車を眺めながら、工場の一角へ。

「読者の方は、きっとこれをご覧になったのでしょう」と寺本さん。

先頭車両の正面の右下に、文字が書かれた箱が見えます。近づいてみると……

これですね。確かに分かりやすく「連結器中間体」と書いてあり、ふたのようなものがついています。一体何が入っているのか、気になりますね!

連結器中間体と書かれた箱のふたを、オープン!

玉手箱を開けるような、少しドキドキする気持ちになりながら、閉ざされたそのふたが開かれるのを待ちます!

中には金属の大きな塊のようなものが。

その塊を、寺本さんと多宮さんが「せーの!」と声を合わせて台車の上へ。
かなり、重そうです。

「これが例の箱に書いてあった『連結器中間体』と呼ばれるもので、車両と車両をつなぐ連結器の変換器なんですよ」

連結器中間体をどのようにして使うかの説明の前に、「連結器」について小林さんに詳しく教えていただきました。

電車は、複数の車両を連結して編成を組んでいます。その車両同士をつなぐための装置が連結器。
先頭車両の連結器は、大きく分けて3種類あります。

左から、自動連結器、自動密着連結器、全自動密着連結器。

自動連結器(以下、自連という)は、「ひじ」と呼ばれる部分を開いて連結する構造になっていて、車両間の連結・解放が簡単にできるという特徴があり、比較的古い車両に多いそうです。

自動密着連結器(以下、自密という)は、連結面が密着し、空気管も同時に連結できる構造になっています。
(電車を動かすためには、車両を連結するだけでなく、車両間で空気と電気も連携する必要があります)

そして、自密の下に長方形の機器がついているのが全自動密着連結器(以下、全自密という)。長方形の機器は電気連結器で、「全自動」という名前の通り、空気も電気も同時に運転台から連結・解放の操作ができます。

連結する車両の連結器が左の突起部分に突き当たると、電気連結器のカバーが開く構造になっています。

この3つの連結器は構造が異なるため、そのままでは連結ができません。

通常は異なる連結器同士を連結することはありませんが、例えば、線路上の車両が何らかの理由で動けなくなるような状況になった時、連結器が異なる別の車両により牽引する必要が出てきます。

「いち早く事態に対応するために、連結器中間体を先頭車両に備えておくことで、連結器の種類に関係なく、どの車両とも連結できるようにしているんです」

連結器中間体をもう一度よく見てみましょう。

左は自連に、右は自密・全自密と噛み合う形になっていることがわかるでしょうか。

再び重い連結器中間体を寺本さんと多宮さんに持ち上げてもらい、全自密に取り付けていただきました。
凹凸が合うように差し込むだけで、全自密側の連結は完了です。
これで、自連の車両と自密・全自密の車両を連結できるようになりました。

中間車両はどのように繋がっている?

では、運転台のない車両間はどのようにして繋がっているのでしょう?
走っている阪急電車を見ると、肝心の連結部分は転落防止の幌(ほろ)で隠れていて、実はよく見えません。

あの幌の向こうはどうなっているのか…!?
再びお三方に、整備中の車両を見せていただきました。

「この連結器は、恒久的に連結・解放を行わないため『半永久密着連結器』と呼ばれています」と小林さん。

両方の連結器を4本のボルトで固定する簡単な構造になっていて、作業の手間はかかるものの、前後のガタつきが起きにくく、揺れを軽減できるそうです。

「半永久密着連結器」は車体をつなぐ役割だけを担っているので、電気と空気は両隣に設置されている複数の配線・配管でつないでいます。2つ前の写真の、転落防止の幌の外からも見えていますね。

連結器中間体は「京とれいん雅洛」にも

話は戻って、連結器中間体が収納されている箱について。
最近の車両は、先頭車両下のスカートと一体化した構造も多く、文字が書かれていない場合も多いそう。

気づかない方が多いかもしれませんが、どの先頭車両にも備えられています。
7000系を改造した「京とれいん雅洛」の先頭車両にも、連結器中間体と書かれた箱が。

上2枚の写真、お気づきでしょうか。

本物の「京とれいん雅洛」ではなく、10分の1の縮尺で製作した模型の一部分を撮っています。

阪急レールウェイフェスティバルなどのイベントで展示するために、正雀工場のスタッフが作ったもの。模型とはいえ、限りなく本物と同じように忠実に製作するスタッフのこだわりと熱量が、ひしひしと伝わってきます!

まとめ

連結器中間体に、自連、自密、全自密。普段何気なく乗車している阪急電車の豆知識が、また一つ増える調査となりました。そしてこうした様々な機器は、職人と呼ぶべき現場の社員の目と手と確かな経験によってメンテナンスされ、安全な運行につながっているのです。

最後まで記事をお読みいただきありがとうございます。阪急沿線おしらべ係では、阪急電鉄だけでなく、阪急沿線アプリで連携しているグループ会社(能勢電鉄、阪急バス、阪急タクシー)に対する質問も受け付けています。

みなさんも気になるものや知りたいことが見つかった時は、ぜひ「阪急沿線おしらべ係」まで質問をお寄せください。

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