【阪急沿線おしらべ係 第33回】
阪急岡本駅のパタパタが引退してしまう!
【2022年2月配信】
このコーナーでは読者のみなさんからお寄せいただいた、阪急沿線でふと見つけた「気になるもの」や「面白いもの」などを、阪急沿線おしらべ係が調査します。
2月9日にはじまった岡本駅の案内表示設備(パタパタ)の工事が、駅ご利用のお客様や鉄道ファンの間でも話題になっています。そこで今回は多くの方に愛されているパタパタのさまざまな事実を確認するべく、早速調査に出かけました!
パタパタってそもそもなんのこと?
「パタパタってなに?」と思う方もおられるかと思いますが、パタパタは愛称で正しくは「多面式行先表示器(フラップ式)」といいます(正式名称は、「ソラリー社製データービジョンシステム」と呼ばれているそう。ソラリー社はイタリアの会社だそうです)。つまりホームに設置されている案内表示設備のことです。
行先を表示する際に、羽がパタパタと音をたてることから、パタパタと呼ばれています。レトロな見た目や、表示するまでの間にほかの行先が見えたり、羽のパタパタという心地の良い音がすることから、鉄道ファンならず、多くの人に愛されています。
そんなパタパタを深く知るべく、取材させていただいたのは、左から、阪急電鉄・技術部電気計画の岩津良則さん、増田大介さん、矢野達哉さん。案内表示設備などの設計もされている電気系統のスペシャリストです。
※新型コロナウイルス感染防止対策を行いながら、取材・撮影をしております。
岡本駅のパタパタは、神戸線で最後、かつ阪急電鉄で特急が停車する駅で唯一存在していました。他に残っているのは、宝塚線の雲雀丘花屋敷駅、京都線の相川駅、富田駅、総持寺駅の計4駅。この4駅が、いつ新しい案内表示設備に更新されるのか、スケジュールは未定とのこと。気になる方は早めにその姿や音を見に行ってみてはいかがでしょうか?
動画でもチェック!
【公式】阪急電車ファン全員集合!
【徹底解説】パタパタパタパタするアレ。LEDに置き換わり姿を消しつつあるアレ。【スロー映像必見!!!】
パタパタの音を聞くことができるのはもちろん、阪急電車館館長によるパタパタの解説やスロー映像なども見ることができます。
【公式】のせでんチャンネル
【能勢電鉄公式】さよなら、「パタパタ」。〜時代とともに変わる風景〜
分解したパタパタの内部まで見ることもできます。
どうして特急駅で今まで残っていたの?
「岡本駅のパタパタは2022年2月下旬をもって撤去となります。設置が1995年6月ですので、今年で27年目ですね」と増田さん。
工事は、下り(神戸三宮方面行き)ホームではすでにはじまっており、2月中旬からは上り(大阪梅田駅行き)ホームで工事が始まり、2月下旬夜間をもって切り替えとなります。
ここで疑問が「特急が停車する駅で、かつ乗降数も多い岡本駅でなぜ今までパタパタが残っていて、今撤去となったのか」ということ。
「実は…あまりそこに意味はないんです(苦笑)。ほかの案内表示設備とともに順次古いものから更新していて、たまたま岡本駅が残っていた…という感じですね」。岡本駅はパタパタ設置が1995年と比較的新しい方だったからなんだそう(それでも26年経っています)。
パタパタの歴史を学ぼう!
パタパタが阪急電鉄で最初に設置されたのは京都河原町駅、1976年のことだと言います。案内表示設備の歴史は、最初はフィルムが回る表示幕、そこからパタパタとなり、現在主にLED式のものになっています。
こちらは当時新しく設置されたことを伝える阪急電鉄社内誌から。停車駅の表示も路線図形式であったんですね。
出典:阪急電鉄社内誌
おまけ こちらは現役の点灯式案内表示設備(京都線・南千里駅)
このパタパタの仕組みを改めておさらい。パタパタは、文字を上下に分割させて、羽と呼ばれる印字した薄いフラップ(板)を、パタパタと回転させることで案内表示を行っています。
他社ではアルミの素材で作られた羽のパタパタを使用していた中、阪急電鉄では当初からソラリー社製のものを使用。羽は現在も使用されている「紙を圧縮したファイバー製」のものなのだそう。だから阪急のパタパタは音がやわらかく、心地いいんだとお話を聞いて納得!
このパタパタ、メンテナンスは年に2回。最終電車の出発後手動で1つずつ点検しており、その内一回は、羽を取り出して表示面をクロスで拭くなど、手作業で清掃もしているのだそう(駅名の変更などがあればその都度追加で行います)。
岡本駅には4つの筐体があり、1つの筐体で表裏あるので全部で16のパタパタがあります。1つのパタパタには最大60枚の羽があるそうで、それを手作業で点検・清掃するのは根気のいる作業ですね。これらを数日間にわたってメンテナンスしています。
「昔は筐体の中に、メンテナンス作業を行っていた人が記名していたこともあると聞きました。それだけ責任をもって行わなければならない大切な業務なのだと考えています」と岩津さん。乗客の方が電車に乗る時1度は必ず目にする案内表示設備、間違いがあってはいけない内容なだけに、丁寧に作業・点検しているということがよくわかるお話でした。
パタパタはここから指示が送られていた?
「実はこれ、パタパタの昔の操作卓なんですよ」と今回特別に見せていただいたのがこちら。
岡本駅のとある場所にあるものなんですが、ボタンやフォントがレトロで、なんともかわいいですよね。点灯しているのが、現在表示されている行先とのこと。
「今は別の場所で指示を送れるようになっていますが、これも今後はパソコンなどに切り替わります」。便利になると同時に、少し寂しさも感じますね。
より進化して便利になる列車案内設備へ
ファンも多いパタパタの一つが引退してしまうことについて「あの心地いい音など、古きよきものがなくなるのは寂しく感慨深いですが、お客様にとって案内表示設備がより見やすく内容が充実するのであれば仕方ないかなと思いますね」と矢野さん。
岡本駅では、2022年2月中旬には新しい案内表示設備が設置されます。
増田さんは「2月下旬までの期間は、新しい案内表示設備とパタパタが並ぶイメージですね。新しい案内表示設備は、駅のホームとして初めてLCD式の案内表示設備を導入することになります(川西能勢口駅のコンコースが初の設置)。一面ディスプレイになりますので、今までのLED式よりさらに見えやすくなると思いますよ。その違いなど見てもらえるとうれしいですね」とのこと。
<大阪梅田駅のLED式の案内表示設備>
<ホーム上のLED式案内表示設備 淡路駅>
ちなみにLED式案内表示設備は、省エネ性能に優れ、長寿命なところが特徴。
<川西能勢口駅コンコースのLCD式案内表示設備>
また、岡本駅で新しく導入されるLCD式は、液晶モニターを使用しており、視認性に優れているところが特徴です。パタパタが1つ引退してしまうのは寂しいですが、阪急電鉄ならではのこだわりの技術がまた一つ見られる楽しみが増えた取材になりました。
まとめ
普段電車を乗り降りされる際、案内表示設備などに注目することは少ないかもしれません。よく目にしているものや使っているものなどが、実はその時々の最先端の技術なんてことも。今後は技術の進化にも注目してもらえればと思います。
※案内表示設備の設置スケジュールなどの問い合わせは、ご遠慮ください。また、撮影に行かれる方も周りのお客様のご迷惑にならないようにお願いいたします。
最後まで記事をお読みいただきありがとうございます。阪急沿線おしらべ係では、阪急電鉄だけでなく、阪急沿線アプリで連携しているグループ会社(能勢電鉄、阪急バス、阪急タクシー)に対する質問も受け付けています。
みなさんも気になるものや知りたいことが見つかった時は、ぜひ「阪急沿線おしらべ係」まで質問をお寄せください。
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